かつて わたしをイジメていた、"美波"は、素知らぬ顔で、綺麗な爪をいじりながら話している。
一刻も早くその場を離れたくて、背を向けて歩きだそうとしたら、パシッと腕を掴まれた。
『そんなの知らない』と言いたかったのだが、
彼女の、私の腕を掴む手に力が込もって、思うように声が出せない。
素直に美波のことを可愛そうと思って、そう言ったら、美波は逆に怒り出した。
人の彼氏を奪って、楽しいワケがない。
そもそも、奪おうだなんて思っていないのに…
美波は笑顔を消し、ポケットからカッターナイフを取り出した。
だんだんカッターナイフの切っ先が近付いてきて、怖さに目を閉じたその瞬間。
ザクッ
美波は自分で自分の腕を切り、悲鳴をあげた。
悲鳴を聞き付けた人がどんどん集まってくる。
美波は私の手に、無理やりカッターナイフを握らせようとする。
いっぱいに出したナイフが私の手にも刺さって、床に2人分の血が溢れだした。
美波が金切り声で叫ぶが、体育教師は保健室の先生を呼びに行ったのか、そこにはいなかった。
美波さんは泣きじゃくっている。
周りから見れば、まるで私が悪者のようだ。
足下には、ボタボタと血が溜まっていく。
もう、意識が保てない…。
──そう思った瞬間
颯爽と現れた2人は、走ってこちらに向かってきた。
うらたんは、録音機を大音量にして流し、センラはハンカチで、私の手のキズを押さえてくれた。
美波はうらたんが流した録音機の音声を聞いて、真っ青になっている。
美波は精一杯 言い訳をして誤魔化そうとしているが、私の顔を見て硬直した。
美波は最後まで私に謝ることはなかった。
何人かの先生に連れていかれるときでさえ、私をギッと睨んでいた。
頬に手を伸ばすと、たしかに涙で濡れていた。
その後、うらたんとセンラは、私の涙が止まるまで抱きしめてくれた。
あとがき
すっごくカッターキャー難しい(笑)
つぎヒメちゃんよろしくね!
それじゃ、おつりゅう!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。