第10話

9話
764
2019/12/06 04:06




小学生のころ学年で一番
身長が高かった私は






残念ながらそのまま成長が
止まってしまって、今ではすっかり
背の低い方になってしまった。







背が低いのは空手も合気道も
不利なんだよなぁ…







背が低いことをいかせるほど
機敏でもないし…







今田美桜
今田美桜
なんだかよくわからないけど
あなたの好きになる人は
強くなきゃいけないのね?
あんなカッコいい幼なじみいたら
私なら絶対彼氏にしちゃうけどな
吉川
吉川
そういうもの?
今田美桜
今田美桜
普通はそうじゃない?
吉川
吉川
…よく分からないや








それを聞いた美桜ちゃんが
目を細めてじっと私を見つめた







今田美桜
今田美桜
もしかして、あなた…今まで
好きになった人すらいない…とか?








うっ……







吉川
吉川
いない…のかも…?








口をあんぐり開けて呆然としている
美桜ちゃんに、凄く申し訳ない
気持ちになった。







美桜ちゃん…
恋ばなひとつできない
私で本当にごめん…







吉川
吉川
あ、でもね、通ってた空手の道場に
一人だけ全然敵わなかった人がいてね

あれば悔しかったなぁ…








同じ空手道場に通っていた一つ年上の
廉(れん)は、とにかく強かった。







何度も取り組みを挑んでみたけれど
一度として勝てたことはなかった。
今田美桜
今田美桜
もしかして、その人があなたの初恋?








美桜ちゃんがキラリと目を輝かせる







吉川
吉川
うーん…初恋とは少し違うのかな。
はじめて全く敵わないと思った
相手っていうか。
もう何年も会ってないし…
今田美桜
今田美桜
そっか…それじゃ、あなたの
初恋はこれからなんだね!

そういうことなら協力しちゃうよっ!
彼氏の友達でいい人沢山いるしっ!








興奮気味にそう叫んだ美桜ちゃんに
笑顔を返した。







初恋かぁ…
誰かを好きになるって
どんな感じなんだろう…







ふと、小さい頃の紫耀を思い出して
頬がゆるんだ。







吉川
吉川
でもね、小さい頃の紫耀は
めっちゃ可愛かったんだよ!

女の子みたいな顔して、いつも涙目で
大きな目をうるうるさせててね。

私が見えなくなると
'あなたちゃんどこー'
って泣いて追いかけてきたの。

最近はちょっとオッサン化
してきたけど…
平野紫耀
平野紫耀
あなたちゃん、なんの話?








突然現れた紫耀の腕に首を
ぐるりと絡めとられて


ぐぇっ……く、苦しいっ!!







吉川
吉川
…な、なんでもないっ!
ゲホッ!

プリ小説オーディオドラマ