駅の改札口の前で私は彼を待っていた。
5分…10分…なかなか来ない。
スマホを見て時間を確認したり、LINEが来ていないか見てみる。
隼人から言ってきたのに。
来ない…と思っていたその時
やっと来た。
こうやって彼氏の言うことを聞いてあげるのも彼女の役目。
隼人が入って行ったのは、ロックやダンス系の商品が置いてある雑貨屋だった。
目をキラキラさせながら隼人はTシャツやキャップを楽しそうに見ている。
私もせっかく来たのだから店内に目を通す。
隼人はTシャツを持ってきて私に見せてきた。
黒地のシャツにはピンク色で英語の単語がたくさん書いてあった。
その一つに「Candy」とあった。
よくよく見ればキャンディだった。
そう言うと隼人は2個のキャップを持って来て一つを私に被せた。
手首を掴まれて鏡の前に着くと。真っ直ぐ鏡を見る。
そこにはまた英語が書いてあった。
LOVE YOU→
今度は間違えなかった。
隼人のキャップにも同じく
←LOVE YOU
とあった。
これって…
LOVE YOUキャップを被りながら私達は鏡の前でそっと口付けを交わした。
-Fin-
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!