hj
骨音が聞きたくなるといよいよだと感じる。欠けることでようやく僕は泣くことができるのだ。
動かすたびに走り抜けるサイレン。膝が特に心地良い。
今の自分は骨伝導を受信するだけの機械。脳で動かして、信号を受け取るそれだけ。
それしかしない。眠気が来ると骨の涙を終える。
ほんの少し多幸感がある。擬似オキシトシンと言ってもいいだろう。ホワホワした状態で階段を降りる。足取りは軽く2階のドアを開いていた。
あかりとともに誰かが映る。ようへいくんだった。思いもよらない人がいるというのは、こんなにも嬉しいことだと、笑みを抑えることはしなかった。
hj「あれ、よーへいくんじゃないですか 」
yh「はじめくん、お疲れ様です 」
hj「珍しいですね、この時間いるの。誰かに用事、ですか? 」
yh「そう……すね、こっち寄ったんで、久々にまたとか、たなっちとかとメシ行こうかなって。2人はまだ仕事なんで、ちょっと待機中です。
……あ、ここプライベートでもはじめくん使うんでしたよね。おやすみ中だったら下いきますよ 」
hj「いやいや全然、いてください。僕もちょっと寝てただけなんで。むしろ寝起きで、ようへいくんいたのサプライズすぎて…… 」
yh「そうなら良かったのかな……うん 」
hj「そうですよ。さすがようへいくんです理解がはやい 」
yh「お褒めあずかり光栄ですが………はじめくん今日はもう仕事ないんすか? 」
hj「えーと、あとはメール数件送るぐらいすね 」
yh「もし、はじめくんさえよければメシ行きませんか……? 最近行けてなかったから、行ければなとは思ってるんすけど、どう、ですかね……? 」
hj「うーん、今日は……やめておこうかな。少し眠たくて……これからまた寝ようかと思ってます 」
yh「うん、それなら……わかりました。ゆっくり休んでください。食事はまた、はじめくんが行ける時行きましょう 」
hj「誘ってくれたのに、すみません。なんだか今日は無性に眠くて…… 」
yh「それで……良いと思います。
そのくらい、今くらいは、自分の気分で、決めちゃっても。
逆にそうやってはじめくんが自分のこと、言ってくれて良かったです 」
hj「決めさせてくれて、ありがとうございます……。今日は行けないけど、また行けるように予定空けときますね 」
yh「またの機会、待ってます。と言っても今回俺も、当日に誘っちゃったから、今更ながら急過ぎました……。申し訳ない…… 」
hj「ううん、俺、嬉しかったんです。こういう会話ができることが。すごく、こう、伝えられたなって思えました。今日は良い日です。とても 」
yh「それなら……良かったです? 」
hj「デジャブだ 」
yh「ほんとだ 」
hj「ふふふ…… あんまりにデジャブ過ぎて 」
yh「んははは……確かに反応、同じすぎでした。あ、仕事……2人仕事終わったみたいです。LINE入ってました 」
hj「ああ、んー、じゃあまた……行きましょう 」
yh「はい……また行きましょう。はじめくんそれから、おやすみなさい 」
hj「おやすみなさい、ようへいくん 」
hj
彼が出て、今度はちゃんと布団入る。別の涙が骨の節々を渡って喜んでいる。返せなかったかけらを波へ送れる、ひとつひとつ補完されていく。
日々に流される中で、たまには、答えておこうかな。すこし前の一欠片の自分に。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。