第117話

香木(knyh
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2023/11/26 14:53 更新
香木

なるべくして、なったのだろう。長い時間をかけて。本来触れるべきだったものに触れず、獣や虫に晒され、移りゆく季節に翻弄されて。生きてきたんだ。酷な選択を自ら強いてまで。悠久の時間、在り続ける。誰もいない、人もいない、孤独だっただろう。いや、一人でよかったんだ。よかったのに、微笑みかけたら、人が人々がそれでいることを望んだ。本人の意思とは関係なく、いること、在ることを求められた。

しょうがない、僕も人だから。きっとそういう見方しかできない。女神がいたから。だから、同じ場に留めたくなる。無情を愛情と言って、絆していくのだ。程よい一途植えつけて。


情という根が湧き上がっては、死に絶え、再生を繰り返し、新たにやり直す。人間の薄汚れた部分から、奇跡ともとれる部分まで見てきても、荒むことはない。今度は見目だけで、佇む。

思うのは、人の元にいたからこそ、逢えたらいいな。かつて、曲がりなりにも、囲いの中でも、愛した人達、受け入れた人達に。花が咲き誇るように笑って、皮肉のひとつでも言いながら。


yh「へえ、香木っていうんだ。お香とはまた違うんだね 」


kn「自然にできたものを切り取った……って感じなのかな。それを細かくして焚いたり、加工して使うらしいです。これは将軍家に伝わるものらしいですよ 」


yh「権力者の贅沢、お作法ぽいけど、今でいうアロマ的なものか 」


kn「そういう役割もあるって書いてあります。今も昔も香りは気にしてるんすね 」


yh「特に貴族とか、上位の武士焚いてそう。出掛ける前とか 」


kn「女子に会う前とか笑 」


yh「やってそう笑 」


kn「今日はあの人に会うからこれにしよ〜って 」


yh「美容男子の元祖みたいな笑 てか、この香木さもう使われることってないのかな? 」


kn「うーん、もう貴重なものだから使われてないかもしれないですね。美術館に展示されているか、それ以外は仕舞われているかになるのかな 」


yh「まあ、そっか……。だよね。こういう展示物とかほとんど美術館にあるか、個人で持っていても、それがかつて使っていた人とは限らんもんな…… 」


kn「そこらへんは時代の流れとか、その時の世情で仕方ない部分はあります……。実際意思があるわけじゃないですし、その場所行け言われれば行くしかないですよ 」


yh「足生えて動くわけでもないしね……。
それでも、せめてこの香木がさ、香木として大切に扱ってくれた人のところへ行けたら、逢えたらいいね。本人は難しくても、その子孫とか…… 」


kn「そしたらその香木、相当嬉しいすよ。だって好きな人のところ行けるわけですから。ようへいさんのそういう考え方好きかも 」


yh「理想論だけどね。あっ、でも何回も別の家とか渡り歩いたものとかはどーなんだろ 」


kn「それは……今更来歴辿るのも大変だし、それか時間かかるの覚悟で、調べるしか……ない? ようへいさんだったらどうします? 」


yh「うーん、全部まわりたいけど、大変だしな……。んまあ、1番思い出残ってるところ行くかな。あわよくば寄り道したい笑 」


kn「あの……寄り道のリストには…… 」


yh「どした? 」


kn「い、いえなにも 」


yh「帰るよ 」

kn「え…… 」


yh「けんすけのところには真っ直ぐ帰るから 」


kn「きてくれるんですね真っ直ぐに…… 」


yh「そりゃあね。だから……花びらいっぱいに出迎えてね 」


kn side
いにしえの香木が今日のためにきてくれた気がする。眩い花の精を連れて。ちゃんと用意しておこう。未来の今日に、あなたが美しく咲き笑っているように。













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