第109話

鳩の卵(tmyh
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2023/09/24 12:20
鳩の卵


tm side
フライパンに卵を落とす。まとわりつく白身は浮き出て、瞬時に固まり出した。堅焼きになるのを待つ。その横にもうひとつ。半熟の目玉焼き。数分もかからず、鉄板を離れる卵。昨日の情事、濡れ鼠になるまで晒しあった表面。綺麗なところばかり見せようとするので、シーツで自制していた手、使ってよがる場所をご教示いただいた。それでも全部は教えてくれなかったけど。
性質は変わらないのに、食べ続けるのは僕の悪い癖。探究心? 優位性?いや、気が済まないからか。知らないことへの恐怖が、許しあうことで失ってしまう解像度が、僕をフローな状態へと駆り立たせている。まだだ、まだ、欲しい。ただ、一気に望めば消化不良にさせる。うかうかしてても他の誰かに気付かされてしまう。だからまあ……不確定要素は潰さないと。ひと突きでね。


箸で貫く黄身。ダラダラと垂れ崩壊していく。その様を眺めて、皿に流し入れたところで、彼は起きてきた。テーブルに案内して、パンとヨーグルトと、ハムそして目玉焼きを差し出す。

yh「目玉焼き……作ってくれたの? 」


tm 「はい、俺も食べたかったんで食べてください 」


yh「ありがと……。半熟好きだから、食べる 」


tm「良かったです。お気に召してもらえて 」


yh「……それと、あのさ 」 


tm「どーしました? 」


yh「堅焼きも食べたいからまた、作って……ほしい。久しぶりに朝ちゃんと食えて、なんだか食べたくなっちゃって 」


tm「作りますよ。朝まで過ごしてくれるなら 」

卵を割らなければ幸せを演出出来ないと痛感した。

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