第3話

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2021/04/17 11:58

『私ね、薔薇すきなんだぁ!』


それは女性、、、
女の子なら誰だって花は好きだろ、
心の中でそう呟いて彼女が話し始めるのを待つ。


『薔薇、、ね。
 私のお母さんが好きだったの。』


「、、、なんで」


ふふ、、なんでだと思う~?
控えめにそう言う彼女のことを見て
あぁ、すきなんだなぁ。
自覚をする。



「知るわけねぇじゃん。
 そんなの。」






『薔薇ってね、

 薔薇色の人生にしてくれるんだって!』



「、、、それで好きなのか?」


阿呆らしい理由だとか
何時もなら笑っていたかもしれない。
でもその言葉を放った彼女。



彼女の表情が一瞬曇ったのを
彼はその蒼い鮮明な眼でしっかりと捉えていた。






『薔薇って愛の言葉でしょ?
 愛って人を幸せにするから、
 死んだときにね、供えて欲しいって
 お母さんが言ってたの。』






彼女の母はもういない。
遺骨すら残っていない、跡形もなく
その存在が消えてしまったのだという。
大方呪いの所為だと見当はついているが
一向に解決はしない。




「お前はどうなんだよ。」





『私は、、そうだなぁ、、
 蒼い薔薇、、、供えて欲しいかなぁ、、』





「そんなのねーじゃん。」




在るかもしれないでしょう?
それに、悟が大人になる頃にはもうきっと
出来てるよ!




ね、あっち行こう?
川の方を指さしてその日一日は
何事もなかったかのように
遊んで話して夜まで帰らなくて。








幸せな日々を送ったと
我ながら思う、



少し早すぎる青春だった。









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