私が目を覚めて1時間後病室に誰か来た
白衣を着ている
何も思い出せない私には今全部が恐怖になっている
渡された名刺に物に目を通す
名刺と言っても堅苦しいものじゃなくて逆に可愛らしく動物のイラストなどが印刷されている
名前を1文字1文字読んでいく
私が言うと微笑んだ
かっこいい…
名前を間違えてしまったことに申し訳ない気持ちになる
カウンセリング…
記憶を戻すために必要な事らしい
私も早く記憶を戻したい
交通事故……
首を横に振った
何も分からないことになぜか罪悪感が出た
また首を横に振った
すると先生は白衣のポケットから小さな紙とボールペンを出して何かを書き始める
左利き何だなと頭の片隅で思った
紙を見る
【川上雫】そう書いてある
私の名前は川上雫、それさえも分からなかった
どうしてこんなにも優しく声をかけてくれるんだろう
カウンセリングの先生だから?
先程わかった名前をドア付近で呼ばれ見るとまた知らない男性
男性は近付いて私の顔を見た
話しかけられ誰かもわからないため言葉が詰まった
男性は息切れをしていて冬だと言うのに汗もかいている
それほど走り続けてここに来たのかな
誰のために__?
ヒカルさん…
付き合ってた?
私とこの人が…?
私に言って廊下に出ていってしまった
また誰もいなくなった病室
私は川上雫で交通事故に遭った…そして記憶喪失…
何も思い出せないことから記憶喪失になった事は確かだ
ここは病院だけどどこの病院?
なんて言う街?
何県?
怖い…
私だけ取り残されたみたいになる
早く……早く思い出したい
何かを思い出そうとすると頭がひどく痛くなった
思い出したいのに思い出せない
それがツラい
頭とは違う痛みも来て痛みの場所を探してみると足にあった
ガーゼが貼ってあって痣もあった
交通事故で出来たのかな…
暫くしてヒカルさんと先生が戻ってきた
時計を見ると30分経っていた
車には轢かれてないから軽傷で済んだんだ…
良かった…
カウンセリングを週に2回、大変そうだけどこれも記憶を戻すため
私は承諾をした
家族が居るならお見舞いに来るはずだ
でもそういった人は見ていない
普通は悲しむ所のはずだけど私は不思議な気持ちだった
覚えてないから?
ただ、家族は居ないってことがわかった
先生が出ていってヒカルさんと2人きり
ヒカルさんは近くの椅子に座った
先生が書いていった紙に自分の名前を書いた
【輝瑠】漢字でそう書くんだ
名前がキレイだな…
ここからまた記憶を戻すために頑張ろう
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!