貴方side
文化祭マジックなんて嘘。
もしくは夢。
もしくは妄想。
……もしくは美男美女に限り発生する
イベントなのかもしれない。
笑い事じゃない。
私の青春の1ページになるはずだった大イベントの
文化祭は見事に残念なものになってしまった。
のんちゃんの甘酸っぱい青春と引き換えに。
ゴミ箱を抱えて急ぐ私は
のんちゃんのそんな声は聞こえなかったし
のんちゃんがどんな顔をしてたかも
もちろん、見てなかった。
運良くゴミ捨て場には
まだ先輩がいて。
からになったゴミ箱を片手で抱えていた。
それすらもかっこいいと思ってしまう私は
本当に好きなんだなって。
って笑って、
ゴミ箱をひっくり返して椅子みたいにして
そこに座った。
私だって本当は見たかったって
素直に言えてたらどんなにいい事か。
なんて行って本当に行きそうになる先輩を
慌てて止めた。
って見開く目の大きいこと。笑
って可笑しそうに笑う。
この一言で会話が終わっちゃった事に
とても後悔した。
って、スマホを出してくる先輩。
どうしたらいいのか分からず
手に取ろうとした頭を軽く叩かれた。
ねぇ、のんちゃん。
さっきはごめんね。
今度何か奢ってあげなきゃね。
ちょっとお高いアイスでも。
私にだって十分すぎる文化祭のマジックが起こった。
携帯の上に新しく追加された先輩の連絡先。
私は嬉しくて笑顔が溢れた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。