貴方side
入学式から1ヶ月経ったある日。
私もクラスに馴染んで沢山の友達ができた。
体育の授業の後元々持ってきていた水筒のお茶を
切らしてしまい、財布を持って昇降口の近くにある
自動販売機の前に立ち
どれを飲もうか迷っていた時
特徴的な声でもう後ろを振り向かないでも
分かってしまう。
私が振り向かなかったからなのか
先輩は私の隣に立った。
ふと隣を見れば
先輩はネクタイを少し緩めて第1ボタンを外して
袖のシャツをまくっていた。
って言いかけていた時後ろから先輩を呼ぶ声が
聞こえた。
…私にも一応名前あるのにな。
そりゃそうか、同じバンドの妹なら
誰だって名前じゃなくて妹ちゃんってなるよな…。
先輩に場所を譲って先に買わせてあげる。
後ろでまだ何買おうか悩んでいたけれど
前の先輩たちは直ぐにお金を入れてボタンを押して
あっという間に買い終わってしまったから
まだ決まってないのに…なんて
思っていたら
目の前に真新しいペットボトルが
差し出されていて誰だって思って
上を見ればしげ先輩の腕が伸びていた。
先輩の手には私もよく飲むお茶。
どういうことか分からず先輩を見つめていたら
って言いながら私の手に乗せたしげ先輩。
目の下に笑窪を出しながら笑う先輩。
先輩の笑顔は本当に可愛いなって…。
お茶を受け取ればまた笑ってくれた先輩。
さり気なく私の名前を呼んだしげ先輩。
女扱いに慣れているのか
はまたま私がそんな素振りや顔を見せて
しまったのか……。
どっちか何も分からなかったけれど
でも何故か嬉しかったっていうのは
変わらなかった。
今思い返せば
先輩からだったね。
先輩が最初に私の名前を呼んだんだよ。
しかも今となっては考えられない
「ちゃん」付で呼ぶの。
でも
それが嬉しかったのは言わないでおくよ。
先輩だったから、良かったんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。