貴方side
退屈すぎる夏休みが明けて
あっという間にまた二学期が始まる今日。
夏休み明けの学校で
久しぶりに見かけた先輩は
なんとなく少し肌が焼けてる気がした。
先輩と話すのが久しぶりだから
少し緊張する。
「文化祭」
ってことは軽音部はパフォーマンスするのかな。
親切に自販機に並ぶレモンソーダーを
先輩はニコニコと指さすから
素直にお金を入れてボタンを押した。
改めてお祝いの言葉を添えて渡せば
久しぶりに話せたと
久しぶりに会えたと舞い上がっていたのは
自分だけなんだなと思うと
少し寂しくて
ぺこりと頭を下げて
目の前の自分の下駄箱へと足を進めた。
先輩の声に振り向けば
飛んできたものを咄嗟に受け取る。
ひんやり冷たいりんごジュース。
ニヤリと笑う先輩はそのまま階段を上がって行った。
手元のりんごジュースは
私みたいに汗をかいていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。