第15話

703
2021/03/06 05:57
貴方side
文化祭マジックが起こってから数日後。


📱SHIGEさんから連絡が届きました。

📱SHIGEさんから連絡が届きました。

📱SHIGEさんから連絡が届きました。

『なぁ!このバンドかっこええねん!聴いて!!』

『淳太の顔!似てるやろ?笑』

『虹出ててん!ご利益あるから待受にしとき』




深い意味の無いメッセージに
一々胸を弾ませてしまう。
油断して半袖で登校したものの…
あなた

……最悪だ。

突然の雨と肌寒い夕方に心は憂鬱。
登下校で聴く音楽はもっぱら
先輩のおすすめのミックスになっていた。
あなた

……寒い。

夏という季節はどこに行ったんだか
今はもう空きがすぐそこまで来ているこの時期。

服選びに失敗したなと
傘も忘れてさらに失敗したなと
部活終わりの昇降口で雨が止むまで待とうかと
1人気分が沈んでいた時


『行くで。』

あなた

…え?

一瞬だった。

後ろから確かに聞こえた声に驚いていたら

私は腕を引っ張られ
今は大きい傘の下に入って
どこかへ走っている。
全力疾走している。

私の隣で一緒に走っている人は
間違いなく、そうだけど
でもなんで……。

それ以上に私の心は正直だった。

走って着いたのはいつもの公園。
屋根のあるベンチの下で雨が降る音だけが
響いている。
あなた

……先輩。

重岡大毅
重岡大毅
やばいな〜!!
急に降ってくるなんて!
俺ベチョベチョやわ!笑

あんなに大きい傘だったのに
先輩があんなに濡れているのはどういうこと?

左側が特に濡れている。

先輩、もしかしてそういう事ですか?
重岡大毅
重岡大毅
…寒ない?大丈夫?
今日ちょっと寒いで?
あなた

…私が濡れないように。

重岡大毅
重岡大毅
え?なんて?
あなた

私が濡れないように
態と私に多く傘をさしたんですか?

重岡大毅
重岡大毅
わざとちゃう。
当たり前やん。
風邪なんか引かれたら
俺嫌やし。
今日含めて
先輩からの優しさを全部思い出した。

無地の黒いパーカーを羽織っている先輩も
なんだかいつもと雰囲気が違って見えて
かっこよさが増す。
重岡大毅
重岡大毅
ホンマに寒ない?
大丈夫?これ着るか?
先輩は着てたその黒いパーカーを脱いで
私の肩に乗せてくれた。
あなた

……先輩が、寒いです。

重岡大毅
重岡大毅
……ん?
なんか今日甘い物作ったん?
私の質問をまるっと交わされたけど
犬みたいにくんくんと匂いを嗅ぐ先輩が
とても可愛かった。
あなた

……スポンジケーキ、作ったんです。

重岡大毅
重岡大毅
えぇー!美味そう!
やから甘い匂いしてたんや〜!
あなた

……作りすぎちゃって。
食べますか?

重岡大毅
重岡大毅
ホンマに!?食う食う!!
先輩が笑顔で返事をして
私もお弁当を入れている手提げの中から
ラッピングされたスポンジケーキを1つ出して
先輩にあげた。
あなた

……どうぞ。
口に合わなかったらごめんなさい。

重岡大毅
重岡大毅
かまへんかまへん!
ありがとう!
いただきます!!
口いっぱいにスポンジケーキを入れて食べる先輩。
次の瞬間、先輩は口を止めて目を見開いた。
あなた

あ、美味しくなかったですか!
すみません!あの、出していいので…

重岡大毅
重岡大毅
美味い!!!
あなた

えっ?

重岡大毅
重岡大毅
美味い!!!
お前やるやん!!
めっちゃ美味いでこれ!!
思ってた言葉以上の言葉を貰えて
嬉しかった。
わんぱくに食べる先輩が可愛くて
私も思わず笑みが零れた。
重岡大毅
重岡大毅
部活の後とか
授業の後とか腹へんねん。
助かるわ〜!笑笑
あなた

お口にあって良かったです。

重岡大毅
重岡大毅
でもさ?ええん?
あなた

何がですか?

重岡大毅
重岡大毅
こういうのって
好きな人にあげへんくてええん?
あなた

……え?

重岡大毅
重岡大毅
料理部の醍醐味やろ?
好きな人に作ったものをあげんの。
いつの間にか雨が止んでいて
私たちのいる公園の真上には
眩しいくらいの太陽が昇っていた。

…ここしかない、今しかない。
あなた

……先輩。

重岡大毅
重岡大毅
なんや。
あなた

……だからです。

重岡大毅
重岡大毅
…………は?
あなた

……私、先輩が好きです。

重岡大毅
重岡大毅
……何言って、
あなた

本気です。
先輩が好きだから
…だから、今
先輩に食べてもらったんです!

先輩は少し驚いて直ぐに顔を下に伏せてしまった。


……終わった。

私の恋は終わったなって思ったら
あなた

………わぁ。

さっきまで下を向いていたはずの先輩。
それなのに気づいたら私は先輩の腕の中にいた。
あなた

……私、先輩が好きです。
これは、そういうことでいいんですよね。

重岡大毅
重岡大毅
………おぅ。
あなた

……先輩。

重岡大毅
重岡大毅
大毅。
あなた

……え?

重岡大毅
重岡大毅
皆はしげとか
しげ先輩って呼ぶねん。
あなた

…はい。

重岡大毅
重岡大毅
お前は大毅でええよ。
あなた

…大毅先輩。

重岡大毅
重岡大毅
ん。
あなた

……好きです。

重岡大毅
重岡大毅
……俺も好きです。
私の恋は終わらずにずっとずっと続いた。


私の人生の中で間違いなく幸せな瞬間。
そう思って疑わなかったのに。

先輩と過ごす日々が幸せすぎて
私の人生の中で何度も何度も「1番」が
更新されていった。

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