貴方side
ダラダラと過ごしていたら
あっという間に夏休みが終わり
今日からまた学校に行く。
玄関を開けて門までの少しの階段を下りる。
門を開けたら表札にもたれて携帯を弄っている
幼馴染。
私の声に気付いたのんちゃんは
スマホをしまって私の前まで来た。
のんちゃんは私の隣に立って
私のペースに合わせて歩いてくれる。
いつもなら私が
どちらかと言えば先輩のペースに合わせてたっけ…。
目が覚めていた時には
既にど真ん中だった夏休み。
その後半を
私はボーッとつまらない生活を送っていた。
色々な人からも沢山連絡が来た。
のんちゃんもその1人。
着信の音で飛び起きれば損してばかりだった。
当たり前だ。
1番連絡が欲しくてたまらない人は
もうここには居ないのだから。
夏休みが終われば
文化祭という行事がすぐそこに。
私たちのクラスはきっと
今年こそはとウキウキしているのだろう。
のんちゃんが教室の扉を開けば
私は後ろから静かに入る。
でもそう上手くは行かずに
友達がすぐに私の周りを囲んで
無事でよかったと声をかけてくれた。
無事に席に着いても
私は座れなかった。
私はこの席でも沢山の思い出が詰まっているから。
中間先生の英語を聞かないで
すぐそこの校庭でサッカーやハードルを
完璧にこなしていた先輩を思い出す。
夏が似合いすぎた先輩を
思い出してしまった。
初めて会ったあの桜の木は
今は綺麗な緑の葉を身につけている。
先輩は今そっちの世界で
どんな服を着ているのだろう。
夏服の制服かな。
それともバンドのTシャツかな。
甚平着てるのかな。
私の名前を呼んで
私を優しく抱きしめるのんちゃん。
そのままのんちゃんは私の頬を指をなぞった。
泣いてるんだ。
私。
泣いてばっかだ。
机の上に置いたカバンのファスナーを開けて
ファイルをのんちゃんに渡す。
のんちゃんは受け取った後
優しく頭を撫でて後ろの席に戻った。
私がのんちゃんの名前を呼べば
すぐにシャーペンを置いて私の顔を見る。
きっと私は涙で不細工だろう。
驚いた顔になった瞬間
首を垂れたのんちゃん。
それでもすぐに真剣な顔になって
机の上に置いたシャーペンを見てのんちゃんは
またそのシャーペンを握って優しく笑って
私の顔を見た。
笑ったのんちゃんに安心して
私は椅子に座り話し始めた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。