第8話

728
2021/03/04 03:36
重岡side
2人がいる教室に近付くほど聞こえる
誰かが弾いているピアノの音。

もちろん、ピアノは音楽室と
俺ら部活でよく使っている移動式の電子ピアノのみ。

音的には電子ピアノ。
ならあの2人のどちらかが弾いてるってことか…?

小瀧はそんな趣味聞いてへん。
なら、あなたちゃんか?

女の子の趣味にピアノが合っても間違いない。

音がとても綺麗で俺よりも上手い。
ピアノも喜んでる感じ。

教室に着けばやっぱりあなたちゃんが
ピアノを弾いていて小瀧が黒板にもたれながら
それを聞いていた。

あいつら、幼馴染やもんな。
身長差もあってカップルに見える。

俺も初め会った時
お似合いやなって思った。



バレないように廊下の壁にも垂れながら
ピアノの音をずっと聞いていた。



後輩の音に惚れたのは初めてやった。
重岡大毅
重岡大毅
…ほんま綺麗やな。
初めて会った時から俺はもしかしたら
そうだったのかもしれない。

声をかけてよかったって
今でも思ってるくらいやから。

そういえば昨日買ってあげたあのお茶
口にあったんかな。

体育の授業気づいてたで?
俺らの体育見てたこと。
お兄ちゃん目当てなのか知らんけど。

あなたちゃんの隣は小瀧って
そんなのはなんか嫌や。

ダラダラ思っていたら
いつの間にか終わっていたピアノの演奏。
小瀧望
小瀧望
しげ、遅ない?笑
あなた

…本当だ。
先生居なかったのかな。

居るわ、ここに。笑

あなたちゃんのピアノ聞きたくて
ずっと廊下に立ってた

なんて、言えへんやろ。
重岡大毅
重岡大毅
……行くか。
夕焼けが照らす廊下。

予想以上に伸びる俺の影。

ガラガラと音を立てながら開く扉。
小瀧望
小瀧望
おっそ!!笑笑
重岡大毅
重岡大毅
悪ぃ悪ぃ!!笑
淳太と話盛り上がってしまって!笑
あなた

……仲良いんですね、先生と。

重岡大毅
重岡大毅
…まぁな!笑
小瀧には何度言っても直らない敬語。

あなたちゃんはずっと守ってくれてる敬語。

いつか敬語を無くして話してみたいなって。

あなたちゃんだけやで。
あんな可愛い呼び名で呼ぶの。笑

まぁ
俺が冗談半分で言ったつもりやったんやけどな。
あなた

……あ、しげ先輩!

重岡大毅
重岡大毅
…ん?
あなた

お茶、ありがとうございました!笑

重岡大毅
重岡大毅
……かまへんよ!また買ったるわ!
小瀧望
小瀧望
しげー!
俺にも〜!!
重岡大毅
重岡大毅
お前は嫌や!!
自分で買え!アホ!!
バイト代も貯まってる。

自分のために使うために残してるんやけど
あまり物欲がないせいか
貯まる一方。

あなたちゃんのためならいいかなって
思う俺はもしかしたら単純なのかも知らん。
重岡大毅
重岡大毅
……ぁ、ここの教室使うわ〜!
掃除も俺やっとくから
お前ら帰ってええで〜!!
小瀧望
小瀧望
まじ!!!
やったーーーー!!
あなた帰ろ〜!!!
あなた

……大丈夫ですか?

重岡大毅
重岡大毅
かまへんよ!笑
暗くならんうちにはよ帰りや?笑
あなた

…ありがとうございます。
しげ先輩部活頑張ってください。

重岡大毅
重岡大毅
ありがとう。
またな。
あなた

はい!
…あ、のんちゃん待ってよ!





























俺よりも背が小さくて

目が大きくて

髪の毛が綺麗で長くて

笑顔が可愛くて

低くもなく高くもない丁度よくて
聞きやすくずっと聞いていたいような声。

俺の新しい後輩で

神ちゃんの妹で

小瀧の幼馴染。

『神山あなた』

それが俺のあなたちゃんの第一印象。

プリ小説オーディオドラマ