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第38話

# 猫
699
2021/03/16 06:47
貴方side
暖かい日差しに風に舞って散っていく桜。

桜の下で賑わう3年生。


『卒業式』

先輩が生きていたら先輩も参加していたはずの
卒業式。

本当なら私は今頃先輩におめでとうって
伝えるはずだった。
本当なら私は今頃先輩に温かい拍手を
送っているはずだった。

……写真も一緒に撮っていたのかもしれない。
あなた

……先輩。

いつか先輩が言っていた言葉を思い出した。


『卒業式終わったら俺の教室来てや!』

でも今日はそんな約束
先輩がいないから行かなくても
待ってなくてもいいですよね。
あなた

…先輩、おめでとう。

誰もいない3年生の教室。

誰もいない先輩と智にぃの教室。

また間違えて買ってしまった
先輩の大好きなこの炭酸飲料。

……後でのんちゃんにあげようかな。
あなた

……先輩、私行かなきゃ。

生徒会委員の人のアナウンスが
構内に響き静かに先輩が座っていた席から
立った瞬間。


『また間違えて買ったんかい!あなた。』



聞こえないはずのあの声が聞こえた。
半年ぶりのあの声。
甘くて可愛らしいあの声。

名前を呼ばれた方に振り向けば
半年ぶりの会いたかった人。
あなた

……大ちゃん。

重岡大毅
重岡大毅
急にその名前かい!笑笑
さっきまで先輩って呼んでたくせに。
あなた

……大ちゃん。

重岡大毅
重岡大毅
あなた、笑えや笑笑
俺今日、卒業するんやけど?笑笑
あなた

……大ちゃん。

重岡大毅
重岡大毅
あの時言えなかったこと
今日伝えるな。
あなた

……なに?

重岡大毅
重岡大毅
……ごめんな。
辛い思いさせたわ。
約束何も叶えられへんかった。
あなた

……本当だよ。
大ちゃんが居ない学校生活なんて
全然楽しくなかった。

重岡大毅
重岡大毅
……ごめんごめん。笑笑
あなた

……大ちゃん。
卒業、おめでとう。

重岡大毅
重岡大毅
ありがとうな。
1番にらあなたから聞けて
嬉しいわ。
あの時と変わらない笑顔で
そう言って笑って喜んでくれる先輩。
重岡大毅
重岡大毅
なぁ、大分前やけど
俺が言ってたこと覚えとる?
約束。
あなた

……ここに来ること。

重岡大毅
重岡大毅
おぉー!覚えてた!笑笑
……約束今からちょっと変更すんな?
あなた

何にするんですか。

重岡大毅
重岡大毅
軽音部に来てや。笑
……ちゃうな、視聴覚室笑笑
俺らが部活で使ってた部屋。
あなた

……何するんですか?

重岡大毅
重岡大毅
ええから来い。笑
ええな!?
そんでそのジュース。
後で墓に置いといて。
俺もそれ飲みたかってん。笑笑
あなた

……はい。

重岡大毅
重岡大毅
……あなたが高3になったら
別に敬語やなくてええから。
あなた

……え?

重岡大毅
重岡大毅
タメやん笑
…あ、ちゃうな笑
もうタメか笑笑
やからそんな敬語使わんでええ。
普通にタメでええよ。
あなた

……ありがとう。

重岡大毅
重岡大毅
おう笑笑
…あ、神ちゃんの机!
先輩は智にぃが座っていた机に向かえば
椅子に座って机にだらーんと伏せた。
重岡大毅
重岡大毅
……神ちゃんの匂いや。うんうん。
懐かしそうに何度も何度も
神ちゃん、神ちゃんって。
あなた

……大ちゃんは会わないの?
のんちゃんや智にぃにも。

重岡大毅
重岡大毅
………さぁな。
そして大ちゃんはズボンから
何か1枚の紙を取り出して智にぃの机の中に入れた。
あなた

なんですか?それ。

重岡大毅
重岡大毅
あなたには関係あらへんよ。
………行かな、俺。
もう少しここにいてもいいのに…なんて
言えない。

大ちゃんは私の前まで来て
私の手を握ってくれた。
重岡大毅
重岡大毅
……愛してんで。あなた。
あなた

大ちゃん、私も。
卒業、おめでとう。

重岡大毅
重岡大毅
……おおきにな。
絶対、来いよ。
あなた

うん。もちろん。

半年前みたいに
大ちゃんの周りの光が強く光って
私の前から消えて行った。


大ちゃんの教室の窓から外を見ていた時
3年生の廊下が賑やかになってきたので
私はジュースを持って直ぐに自分の教室に戻った。

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