[クリスマススカイ番外編:りょうの気持ち]
あの子に出会ってから、3割くらい友達が減った。
減った、減らした、か。
決してタイプではない、生意気なあの子のために。
雨の日の憂鬱をぶつけるための女も、
深夜でも構わず駆けつける女も、
連れまわすだけの見た目のいい女も、
一目見て、分かった。どんな女よりも輝いていたから。
東海オンエアの人にも言わずにいた関係もあった。
清算、といえば聞こえはいいが、あの子を知れば知るほど他の女が退屈だと思ってしまった。
全てを満たせる素敵な人を見つけてしまったから。
言えないな、こんな事。俺の器用さがあれば隠し通せるのかも知れんけど。
何度も色んな子を傷付けた俺は子供かも知れんし、馬鹿だと思う。
返信がなくなった子もいれば、泣きながら電話してきた子も居たし、待ってると言ってた子も居た。
どの言葉も俺には全て同じで、あの子以外の言葉は何も刺さらなかった。
あの子はロクに返信も返さんし、そんな子よりも手軽に呼べる女の方がいいのかも知れんけど。
時々返ってくるだけの返信で俺の隙間はうまっていた。
たくさん友達はいるはずなのにどこか寂しいこころの奥底が満たされていった。
本当に友達だと思える奴らだけを残した。
利用していただけ、遊んだだけの女は記憶からもデータも全て消した。
消えても隙間はうまる。それでころか溢れ出しそうなほどに満たされた今を大切にしたかった。
生意気そうな横顔を見ると、笑った顔が見たくなる。
短いけどふわふわとした少しだけウェーブのかかった髪の毛、タバコをくわえながらスマホをいじる姿、時々笑って話しかけてくれる姿も、全てが好き。
連絡先さえ教えてくれない生意気なその子は今日も細い指でカクテルを作っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。