[てつや視点]
今日も女の子とデート。
この前デートした女の子が「てつやはさみしいだけなんじゃない?」なんて言ってたことを思い出す。
1人になりたくないだけなのかも知れない。
周りには楽しい友達がたくさんいて、家にも常に友達がいる。
だからこそ1人になるのが怖いのかも知れない。
いくつもお店を歩き回って買い物をして少しだけ疲れた。
だから女の子とカフェに入った。
禁煙席しかないカフェでコーヒーを飲んだ。
日本は喫煙者に優しくない。
まぁ、当たり前なんだけど。
てつや「ごめん、ちょっとタバコ吸ってくるね。」
そう言って喫煙所に向かった。
遠いな、喫煙所。
喫煙所には誰もいなかった。
座って火をつけようとしたけどライターがない。
あー、終わった。めんどくさい。
そう思って立ち上がろうとすると、女の子が入ってきた。
よかった、ライター借りられる。
てつや「ごめん、ライター貸してくれない?」
女の子は少しだけ驚いた顔をしたけど笑って差し出してくれた。
煙たい喫煙所で他愛もない話をした。
なんとなく、このまま話していたいと思った。
言葉数は少ないけど、表情がコロコロ変わって、面白い子だった。
タバコはすぐに短くなった。
それを見て女の子がまたライターを差し出した。
「もう一本だけ付き合ってくれませんか?」
覗き込むようにしてニコッと笑った顔が可愛くて久しぶりにときめいた。
可愛いと思うことがあっても胸がちょっと痛くなるときめきは久しぶり。
俺が何も言わずにタバコに火をつけて笑うとその子も笑ってくれた。
ここで電話が鳴った。デートしてた子からだった。
慌てて出るとどこまでタバコ吸いに行ってるの?と怒られてしまった。
もう少しで吸い終わる、と言って切った。
ごめんなさい引き止めてしまって、彼女さんですか?
申し訳なさそうに聞いてくれたけど彼女ではない。
てつや「いや、普通に友達だよ。」
と、言ってもまだ申し訳なさそうな顔をした。
目の前の女の子はすぐに火を消して、
「付き合ってくれてありがとう!仲良くね!」
と言ってどこかに行ってしまった。
連絡先も聞かずに名前も知らないまま。
ついさっきの胸の痛さが戻ってくる。
煙草を消してデートしてた女の子の元へと向かった。
ごめんごめん。遠くて。いつもの調子で戻った。
それでも頭の中はあの子でいっぱいだった。
その日はお開きにした。
本当は朝まで一緒のつもりだったけど。
夜、ソファの上で編集をしながらあの子のことを考えていた。
窓ガラスについた水滴を眺めて今日は雨だったのか。と、初めて気付いた。
そんな時、電話が鳴った。
りょう「もしもし?てつや今日女の子とデートしてたんだって?」
てつや「なんで知ってんの。笑」
りょう「喫煙所で話したの俺のセフレ。笑」
言葉を失った。
しかも、彼女じゃないんだ。
俺も何人も居たはずなのに「セフレ」って言葉にモヤモヤとした。
てつや「…そうなんだ。」
りょう「面白い人だって言ってたよ。笑」
てつや「ライターありがとう、って言っておいて。」
りょう「寝起き?元気なくない?ついでに飯誘おうと思ってたんだけど。」
てつや「編集終わってないんだよね。また虫さんに怒られるから。」
りょうは連絡先を知っているのか。
りょうから聞けばまた話せるのか。
でもあの子はきっとりょうのこと好きなんだろうな。
東海オンエアだから、って理由なら俺にも連絡先聞くもんな。
りょうだから、セフレでもいいって思えたんだろうな。
いつまでたっても終わらない編集とまた降り始めた雨の音はなんとなく俺を悲しい気持ちにさせた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。