第57話

転生したら猫だった[としみつ]
665
2020/03/31 03:00
最後の記憶は階段から転げ落ちて宙返りをして見えた自分の足。

最初の記憶はふわふわの…前足。


そして目の前にいるのはオレンジ色の髪したうるさいやつ。

…てつやなんだよなぁ。

どう考えてもてつやなんだよなぁ。


てつや「お前の誕生日、俺の友達が事故にあった日なんだ。オスだしな。だからイニシャルをとってT(ティー)になったんだよ。なんか目の上の柄八の字眉毛みたいだし。」


知ってるよ、耳にタコできるわ。毎回泣くなよ。酔った俺が悪いんだから。


そう言おうとしても口から出るのは腑抜けたような可愛らしい鳴き声。


あー。どうせ飼われるなら可愛い女の子の家とかがよかったなー。


そう言おうとしても声は出ない。


てつや「今可愛い女の子に飼われたいって思った?」


え?分かるの?俺だよ、としみつ!



てつや「なんてね、お前俺のこと好きだしそんなわけないもんなぁ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


てつやの家に来てから1ヶ月、東海オンエアがやってきた。


りょう「ティー!会いたかったー!」

ゆめまる「あらららかぁわいいねぇ。」

虫眼鏡「いやこれはとしみつだね。眉毛あるやん。笑」

しばゆー「この俺を見る目もとしみつだなぁ。」



しばゆーお前また声おかしいぞ。またやったのか?

そう言おうとしてもどうせ声なんてだせないからその場に寝転がった。


ゆめまる「これは友好の証なんだよ。ほら、お腹みせてる。」

りょう「そりゃ俺らだもんなー、としみつー。」

ティー「あぁ!もう!うるさいなぁ!」

虫眼鏡「え?」

しばゆー「え?」

てつや「は?」

りょう「…いや。」

ゆめまる「嘘やん。」

ティー「喋れる…。」

虫眼鏡「本当にとしみつ?え、怖いんだけど。」

ティー「俺だって怖いわ喋れる猫とか。」

りょう「その見た目で低い声で喋るなよ。」

ティー「…なんでみんな泣くんだよ。」

ゆめまる「…泣くだろバカ。」

しばゆー「突然居なくなるんだもん、泣くよ。」

てつや「…俺が毎日泣いてんの見てたってことか。」

ティー「だから泣くなって!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[30分後]

ティー「いや、お前ら慣れすぎだろ。俺喋る猫だぞ?」

虫眼鏡「んー。まぁ。としみつと話せるってほうがでかいよ。」

りょう「確かになぁ、でも…。」

ゆめまる「うん。」

てつや「やっぱとしみつが猫として生きてるってことは…。」

ティー「なんなんだよ?」

しばゆー「お前の体は生きてんだよ。一応。意識ゼロで脳波は弱くなってるけど。」

ティー「は?!嘘でしょ?俺生きてんの?」

りょう「一応ね。」

虫眼鏡「まぁ、ほぼ脳死って言われてたから転生してるのもわからんでもないけどさ。」

ティー「…俺、人間に戻れる可能性あることない?」

ゆめまる「そんな小説みたいな話あるわけ…。」

ティー「喋れる猫だってもはやファンタジーだろ!」

てつや「…やってみる価値はある。でもそうしたら今の中の体はどうなる?」

りょう「もしさ、もともと猫の人格?がある中にとしみつ が入り込んでるんだとしたら猫に戻るんじゃない?」

ゆめまる「とりあえず、自分の様子見に行くか?」

虫眼鏡「僕たちといくとと交代で毎日行ってるんだけど、今日はいくとがいるはずだから。」

ティー「…お前らバカだなぁ、脳死なんて言われてんのに毎日くんなよ。」

ゆめまる「あっ、嬉しいしっぽしてるやん。」

ティー「ウルセェなお前は猫博士か!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


てつや「おいとしみつ、看護師さんに怒られるから声出すなよ。」

ティー「出せるかよ。バレたら怒られるどころか研究所行きだろ。」


ニトロ「…としみつくん、おきてください。」

ティー「…。」

てつや「よ、いくと。」

ニトロ「あ、」

りょう「泣くなって。」

ニトロ「でも…。」


俺は痩せてて、せっかくつけた筋肉も台無しだった。毎日来てんだったらヒゲくらい剃ってほしいな。美容室にも行きたい。


てつや「ちょっといくとは出ててくれない?あと看護師さんこないか見張ってて!」

ニトロ「何するんですか?」

てつや「俺の家の猫見せてあげようと思って!」

ニトロ「僕にも後で見せてください!」

てつや「OK!見張ってて!」





りょう「どう?」

ティー「めっちゃ痩せたな。あと髭剃っといて。あと髪切てぇな。誰かワックス持ってない?」

虫眼鏡「そうじゃなくて!」

ゆめまる「戻れそうな感じとかない?」

ティー「いや、ぜんぜ…。」


視界が回るようだった。まるであの時階段から落ちたような。


真っ暗闇の中、自分の姿であてもなく歩いてる。


うわぁ、これなら猫のままの方が良かったな。


「としみつ!としみつ!」

「猫が普通に鳴いてるってことは戻ったのか?」

「としみつ!」


あいつらの声が聞こえる。


「…ヒゲそってあげないと起きないんじゃね?」

「それだ!」


いや絶対それじゃないだろ。暗闇の中で吹き出したその時、光が見えた。


てつや「としみつ!!!!!!!」

としみつ「え?」

りょう「いくとー!としみつ起きたー!」

虫眼鏡「としみつ…。」

としみつ「だからなくなって。」

ニトロ「としみつくん!としみつくん、としみ…。」

としみつ「お前が1番泣くのかよ。笑」

しばゆー「なに食いたい?」

ゆめまる「その前にヒゲ?」

としみつ「ううん、親呼んで。俺の友達も。」

てつや「…バカだなぁ。みんな毎日来てるよ。待ってりゃくる。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あの時はサチオさんまで来たの驚きだったな。

それにしても猫の体が死ななくてよかった。

普通の子猫に戻って成長するにつれて眉毛の柄は消えて行って普通の白猫になったらしい。白猫にはよくあることなんだって。おでこらへんに小さい時だけ模様あるのは。


いまだにこの出来事は東海オンエアだけの秘密だ。

ちなみにてつやが毎日キスしてきてうざかったことはてつやと俺の秘密らしい…。

プリ小説オーディオドラマ