第21話

私と、幼馴染と私の推し
884
2020/03/25 07:30
[幼馴染視点:七夕番外編]

私の幼馴染は私の推しと付き合っている。

それを知ったのは東海オンエアの動画でのこと。

サブチャンで私の推しが抱き抱えていたのは
紛れもなく幼馴染だった。


幼馴染、と言っても今ではすっかり疎遠で、
親同士は仲がいいから時々話を聞く程度だ。

ただの学生と売れっ子デザイナーでは住む世界も
違うと思ってたけど、

まさか自分の好きなYouTuberまで手に入れてる
なんて思わなかった。



でも、あの子ならと、私は自然に笑顔になった。



小さい頃から可愛くて優しくて、男の子にも
負けない強さのあったあなたは常に人気者だった。

小1の時に転入してきて、その時は外国語しか話せなくてよく泣いていた。

そんな時に近所に住んでいた私は一生懸命外国語を覚えてカタコトで話しかけていた。

それでもすぐに日本語を話すようになるとあっという間に私以外の友達がたくさん出来た。

それでも私と仲良くしてくれていたけど、
なんとなく寂しかったのを覚えている。

高校生になると妬み嫉みも増えて一部の女の子に
嫌がらせをされていた時期もあったけど、

あの時のあなたは恋愛よりも夢を叶えたい
って必死に努力していたからそれも自然と消えた。

私も正直、妬んでいた。

ノーメイクで無造作に結んだだけのポニーテール
でも私みたいな普通の女の子よりも人気があった
んだもん、そりゃ多少の嫉みくらいはある。

授業中もいつも何かしら絵を描いたり、
何かの図面を書いてはけしてを繰り返していた。

昼休みになれば可愛いお弁当を出して、
可愛い女の子の友達と話して、放課後は部活。
行事は先頭に立って仕切って、

恵まれた子だと思っていた。

高校を卒業する時に私にだけ新しい携帯番号を教えてくれた時、初めてあなたの闇を知った。

可愛い女の子の友達は悪口三昧だったことも、
部活も本当はしたくなかったことも、
専門学校行きをどうしても大学に進ませたい
先生に反対されていて仕方なく
内申点のためにいい子でいたことも、

「変わらず幼馴染でいてくれてありがとう。」

切なそうに笑う顔だけが今でも思い出された。

専門学校でも友達と呼べる人は数人しか
出来なかったよ。と、いつだったか実家周辺で
あった時に聞いた。

私が妬んでいたこの子は本当は弱くて人付き合いが
苦手な人間だった。

優しいのは変わらなくて、毎年私の誕生日には
あなたがデザインしたものです。と添えられた
ものが送られてくる。

私も毎年、花を贈る。

毎年、

Twitterにその花は載っていた。

明るいあなたであるためのTwitterと、
普段のあなたでいるときのTwitter、

唯一、その花だけが共通して載せられるものだった。


一度だけ、なぜ私なんかと仲良くしてくれるのかと聞いたことがある。


「あの時、私を1番に好きになってくれたのはあなただけだったから。私が友達以上の親友だと思ってるのはあなたともう1人だけなんだ。」


それだけ言って笑った。

私はあの時がどの時なのかは分からない。


話さなくなっても、私の推しと付き合っていても、いつもあなたは私の一番の友達だと思っていたから。



今年も私は笑いながら親友への花を選ぶ。

笑顔でカメラを持って花を撮るあなたの
顔を思い浮かべながら。

プリ小説オーディオドラマ