第5話

選ばれたのは貴方でした[としみつりょう]
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2019/11/01 20:06
🌸発端[としみつ視点]

綾鷹の並ぶでかい机には男6人。

むさくるしい空間だ。

まぁ、いつものこと。

男同士って結局楽しいしいいんだけどさ。


虫眼鏡「ねぇ。」

てつや「どうした虫眼鏡。」

虫眼鏡「華が無さすぎる。」

りょう「いつものことやん。笑」


まぁ、正直だれもが思うことではある。


彼女持ちのゆめまると、妻子持ちの柴田には分からないだろうけど。


虫眼鏡「合コン企画せん?」

てつや「詳しく聞こうか。」

虫眼鏡「ゆめしばは相手居るから司会に回ってもらってー。」

りょう「不安しかないやん。」

虫眼鏡「いやそれはおいといて。笑」

ゆめまる「なに、不安て。笑」

しばゆー「やるよ?合コン神になればいんでしょ?」

虫眼鏡「そういうとこだよ!なんだよ合コン神って!」

てつや「で?」

虫眼鏡「友達の可愛い子に自分よりハイスペックな子を紹介してくれって言って、その子に会う、徐々に可愛くなるのか!みたいな企画。」

りょう「あー、表向きは合コンじゃないんだ。笑」

てつや「でもまぁ、最終的に合コンするの組み込んでも面白くない?4人で白タキシードとか着て。」


こいつらはどうやったらこんなこと思いつくんだか。


とか思ってたらトントン拍子に進む。


てつや「とりあえず白タキシードだね。」

りょう「なんのこだわり?笑」



こうして俺らの合コン企画が始まった。、





🌸決定[りょう視点]

どうやら出会い企画が始まるらしい。

てつやは目がキラキラとしている。

虫さんは提案したもののクリエイターとして面白くしようとしてるのが分かる。

としみつは終始無言だった。これが視聴者さんの言う生理ってやつか?


とにかく知り合いの女性YouTuber4人に声をかけてどんどん紹介してもらう形にした。

何人めで止めるかって言うのはゆめまるとしばゆーのさじ加減らしい。


しっかりとした色白の女の子がいいなぁなんて、意外にも浮かれてる自分がいた。


そして企画は知らぬ間に開始されてて、いつのまにか女の子が揃ったらしい。

しばゆー「12月初めでいい?例の企画の撮影。」

としみつはなんのことだか忘れていたらしい。

てつやと虫さんはどきどきしてきたわーなんて言って笑ってやがる。



🌸一足早く[あなた視点]

11月の半ばくらいに急に友達に「加工なしのiPhoneのカメラで撮った写真くれない?」と言われた。

なんとかって言うYouTuberの企画らしい。

色々説明してもらったけど「あー、なんかテレビでも同じようなのやってた気がするなぁ。」なんて思っただけだった。

仕事前だったから化粧崩れする前だったしまぁいいかって思って写真を送った。


その友達から3日後くらいに電話があって「TwitterのアカウントにDMするからアカウント教えていい?」と、言われた。


そのYouTuberというのは写真だけ見てこの人だと思ったらその人にだけ連絡を取るようにしてるらしい。おかげで私の友達を含む女の子4人を介して私に連絡が来てるらしい。

というか荷が重い。自分で言うのもなんだけど中の中を極めたみたいな女がなんで選ばれたのか。

全く分からなかった。

でも写真送る=OKみたいなもんだからいいよ、とだけ言っておいた。

その日の夜、DMが来ていた。

しばゆー「東海オンエアのしばゆーと申します、お忙しい中協力して頂きありがとうございます。
12月中都合のいい日、時間があれば出来るだけ多く教えて頂きたいです。参加者が東京に多い場合は東京で開催しますがもしかすると名古屋、もしくは岡崎という街になります、交通費の方は勿論こちら側〜…。」

割愛したがとても丁寧な文章で送られてきた。

YouTuberというだけでおちゃらけたやつだと思ってたのは偏見だったのだろうか。

有給がたまってて使おうと思ってたので20日までに分かればいつでもいいです。と返信しておいた。

ありがたいです、決まり次第連絡いたします!と、返ってきて次の日に12月◯日になりました、と連絡があった。

場所は名古屋らしい。

実は近々そっち方面に転勤する予定があったので街並みが観れるのはラッキーだと思った。


そして当日、

お昼は味噌カツを食べてとても幸せだった。

すると隣に知らない人が座った。


???「1人ですか?」

あなた「…はい。」

爽やかな笑顔と少し焼けた肌がまぶしかった。

りょう「りょうって言います。笑」

あなた「え?あ、あなたって言います…?」

りょう「ごめんね、びっくりした?1人で来たら1人でいる女の子見つけたから声かけちゃった。笑」


不思議な人だなぁって思いつつも優しく話しを聞いてくれた。

企画のYouTuberさんは有名な人らしいからあんま言っちゃいけないよなぁって思って秘密にした。


りょうくんは食べ終わっても話を聞いてくれて食べるのが遅い私を待ってくれた。

しかもお手洗いに行ってる間に私の会計も済ませてくれた。

りょう「楽しい時間過ごさせてもらったんだから当たり前やん。笑」

わぁ、初めてこんなこと言われた。王子様っているんだ…。って思った。

りょう「なんか食べたいものない?16時まで暇だし一緒に観光しない?」

あなた「あ、私も16時頃に待ち合わせしてて。」

りょう「え!ちょうどやん!笑」

そうしてデザートを食べに行くことにした、

あなた「わぁ、きれい!もったいなくて食べれない!」

そういって一口食べた。

りょう「いや、秒で食べるやん。笑」

あなた「我慢の限界が3秒でした。笑」

りょう「俺のも一口食べな。」

あなた「じゃあ私のも一口あげます!」

りょう「あ、こっちの方が好きかもしれん。」

あなた「私りょうくんのやつの方が好きです。笑」

りょう「じゃあトレードだ!笑」

そうこうしてるともう時間になってしまった。


駅で待ち合わせだと言うとそこまで連れて行ってくれて、

りょう「連絡先聞いたら怒る?」

あなた「あ…!私も聞こうとしてました!」

りょう「嘘くさい!今の顔!笑」

そういって2人で笑ってLINEを交換した。







🌸しばゆー襲来[あなた視点]

出会う前に素敵な人に出会ったなぁって思ってると金髪で重力に逆らった髪の毛の上下柄のついた服を着る男の人が目の前を通った。

そうそう、YouTuberってのはこう言う人だと思ってたよ。まさかあんな丁寧な文章で送られてくるとはなぁ。

しばゆー「あ!あなたさんですか!」


え……?この人があの……?

あなた「え、DMくださったしばゆーさんですか?」

しばゆー「そうです!もう全員乗ってるので行きましょう!」

そうか、やっぱり奇抜な人が多いのか。


車に着くと綺麗な子が3人、アフロが1人いた。

綺麗な3人は1番後ろだったのでしばゆーさんとふたりで真ん中の席にすわった。

助手席には乗らないんだっておもってたけど助手席にはリュックが2つあった。

後ろからはヒソヒソと声が聞こえた。


どんな子が来るかとおもったぁ。

ね、遅れた割には。笑

私は◯◯がいいなぁ。

クスクスと笑う声と共に虫唾が走る。

確かに私は童顔で化粧もあまりしないし服も探索するつもりで動きやすい格好できていた。

ワンピース姿にふわふわとした巻き髪だったり、サラサラストレートで胸元の開いた服だったり、お化粧バッチリでブランドで身を固めた人とは性別しか一致するところがなかった。

ヘッドフォンをしてPCを開くしばゆーさんと運転するアフロは気付かないようだ。


小綺麗なbarのようなところに入ると、どうぞ!って言われたら入ってねと言われた。


中からは声がする。


そして後ろからはまたヒソヒソと声がした。

気にしないようにして今日これが終わったら何食べようかなとか名古屋といえばなんだろうなーって考えていた。

どうぞ、と大きい声がする。女3人は私を押しのけて、さっきのヒソヒソ声とは違うトーンでこんばんは〜!と言って入っていく。私も続いて入った。


え!と、大きな声がして顔を上げると、りょうがいた。


気にしないようにはしていたけどずっと心細かったからりょうを見ると嬉しくなった。


てつや「知り合い?」

りょう「さっき一緒にケーキ食べたよ。笑」


女がこちらを睨むように見つめる。


あなた「ごめんなさい、知らなくて。」

え〜!本当に知らなかったんですかぁ?

口に両手を当てて女が聞いてくる。


りょう「知らんかったよね?YouTuberヒカキンさんしか知らないって言ってたから俺言い出せんかったもん。笑」




…私そんなこと言ってない、あ、この人助けようとしてくれてる。なんだか泣きそうだった。


一番端っこに座るりょうくんの隣には目つきの悪いふわふわとした髪の毛の人がいた。

その隣にはオレンジの髪の毛の人とメガネで小さい人。


……思ってたよりも緊張せずに行けそう。





🌸出遅れ感[としみつ視点]

女の子が4人入ってきた。

1人だけ後ろをちょこちょこついてくる小動物みたいなのがいた。

ぱっと顔を上げると太陽に照らされた向日葵みたいに明るく笑った。その顔を見た瞬間、俺この子がいいと思った。


でもその笑顔の先にはりょうがいた。


性格の悪そうな女に絡まれてる。


目が笑ってない女くらいわかる。


てつやは何も気付かずに嬉しそうな顔をするけど虫さんは何かを察したように女の子たちを見ていた。


4人が席に座ると企画がスタートした。

自己紹介を終えると、

まずは最初の第一印象で好きな人と自分の名前を紙に書いて出す。

もちろん迷わずにあなたちゃんと書く。りょうのをチラッと覗くとあなたと書いてあった。

虫さんも白紙かあなたとかくだろう。

ゆめまるが開封する。

ゆめまる「お…、わー。ふふっ。」

しばゆー「どうした、見せろ。フッ…。」

ゆめまる「女性陣は〜…うまい具合に分かれてますね〜。ただ、男性陣が3人同じ人を選んでます。」、

ほらな、虫さんは悟り顔で俺を見た。りょうのあの態度だとりょうも入れるって思ったからな。


女達はえぇ、選ばれてないのつらぁい。とかいってた。ひとりひとり絶対に自分だって顔をしているくせに。端っこ、りょうの真向かいで小さくなってるあなたちゃんが一番人気ですよーって言ってやりたくなった。


でもその一番人気はりょうのことが好きなんだろうか。りょうも遊びなら譲ってくんねぇかな、この笑顔。って思った。


🌸質問タイム[あなた視点]


私は気になる人の欄にりょうくん、とかいた。

でも進むにつれて一つ気になることが出てきた。

りょうくんの隣のとしみつくんだった。


話を聞かずに白いタキシードの胸ポケットから出てるハンカチをいじってたり、てつやくんを叩いてたり、かと思えばボーッとしたり。

そういえば小学校の時とか好きな人こんな感じだったなぁって思うと笑ってしまった。



質問タイムは1人一つ、相手サイドに質問ができる。

東海オンエアの人たちは、

てつやくん「1番重要視することは?」
虫さん「身長低いんだけどそれはどう思う?」

そしてとしみつくんは「性格悪い人嫌い?」と、聞いた。女の子達は好きな人で私に優しくしてくれれば〜とか、傷つけられると悲しい〜とか当たり障りのないことを言っていた。

鋭い目つきであなたちゃんは?と聞かれた。

「大嫌いですね、ただ、言いたいことを真正面から言ってくれる性格が悪く見えるだけの人なら好きです。」

と答えた。虫さんが100点の答えだ!なんて言うからまたニコニコとした笑ってない目で見つめられる。

りょうくんの質問は、「好きな食べ物は?」だった。甘いもの〜とか無難なものが飛び交う。

あまりにも女の子達に意地の悪いことをされるので、私が「季節のベリーのフランボワーズ」と言うとりょうくんは笑って

「違うやん結局、クランベリーと洋酒のフォレノワールだったやん。」と、言った。

まさかそんなこと言うとは思ってなかった。ちょっと天然なフリして何やっても無駄だこいつとか思われたかっただけなのに、逆に露骨なりょうくん狙いの女だと思われたかもしれない。

女の子達は、

「好きなタイプは?」
「遠距離でも大丈夫なんですか?」
「理想のデートは?」

って聞いていた。

私の番になって迷わず「明日帰るんですけどここら辺でオススメのご飯屋さんとかないですかね?」と聞いた。

男性陣は笑ってくれた。

でも私は笑えなかった。

テーブルの下ではテーブルクロスに隠れて足を踏まれていた。

あー、ヒールってこんなに痛いんだなぁ。満員電車とか気をつけなきゃとか必死に泣かないように考えていた。

白いスニーカーじゃなくてよかった、パンプスだからこんなことされてるのバレない、とかそんなことばかりが浮かぶ。







🌸お開き[りょう視点]


事あるごとにあなたちゃんの隣の子があなたちゃんの肩に手を置いて「もーう」と言った。

その度にあなたちゃんの表情が曇る。

一瞬だけど青くて長い爪が食い込んでるのが見えた、さすがにこれは…と思い立ち上がろうとすると、




「ちょっとトイレ休憩せん?」

としみつがそう言った、


気付いたのだろうか。

一旦カメラを止めて全員トイレタイムにした。

女の子達はあなたちゃんのことも無理やり連れて行こうとした。

りょう「あ、おなか痛そうな顔してたけど大丈夫?薬いくつかあるから、」

そう声をかけると女の子達は先行くねって言って出て行った。

としみつ「なんかされてたの?」

意外にも1番に口を開いたのはとしみつだった。

虫眼鏡「気付くよね、あれは。」

りょう「やっぱ気付いてた?」

てつや「何が?」

としみつ「あなたちゃん、意地悪されてるよね?」

しばゆー「そうなん?!」

ゆめまる「睨まれてたのは気付いた。」


そいうと小さい手をぶんぶんと動かして

あなた「そんな事ないですよ、もしそれでカメラ止めさせてしまったのなら申し訳ないです。」

と言った。


個室に入ってきた時に俺に向けられた笑顔はそこにはなかった。


としみつ「あのさ、もう尺取れたよね?ここで終わりにしてあとは全員カップル不成立でしたってテロップ適当に入れて終わりでよくない?」

いつのまにかあなたちゃんの隣の席に座ったとしみつがそう言った。

あなたちゃんが申し訳なさそうに俯いた。

としみつがあなたちゃんの手を掴んで俺たちに見せようとした。

あなたちゃんは慌てて隠そうとしたけど、男の力だ、かなうわけがなかった。

手にはうっすら血の跡があった。

としみつ「耳に髪の毛かける時手に血ついてるの見えた。さっき足触ってたよね?足から出てるの?」


あなた「…私だけ体調不良で帰るっていうのはダメですか。」


りょう「足、見せて。」

少しためらったが見せてくれた足には紫のあざと、血が滲んでる所があった。


としみつ「これはお開きでしょ。さすがに。」



全員が納得した。

流れを簡単に考えてると女達が戻ってきた。

「あなたちゃん、トイレ空いたよ?」そう言った。

水分あまり取ってないからと断っていた。あなたちゃんの横に立ってたとしみつがまたあなたちゃんの席に座り直して「好きな席座っていいよ。」といった。

「えー、席交換タイムですかぁ?」キャピキャピしながら各自移動していた。

俺の隣にはあなたちゃんの隣の子が座った。

「…りょうくんのイメージカラーなんですよ。」

そういって首を傾げながら爪を見せてきた。

あぁ、そうなんだ、今青流行ってるらしいしね。

と返しておいた。

また企画が始まって席替え後のフリータイム。
このあとは各自自由と言って締め、ということになった。

相変わらずニコニコと話しかけてくる女を遮ってあなたちゃんに話しかけた。

としみつもあなたちゃんにしか話しかけてない。

としみつをチラッと見るあなたちゃんの顔がなんとなく赤いように見えた。







この次からは[としみつコース][りょうくんコース]でふた通りの展開にします。💚💙

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