第40話

青色の雪[りょう]
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2020/03/01 19:01
[あなた視点]

急に降った雪を見て嬉しそうに

自分だけの雪だるまを作ろう、なんて
言い出した。

すごく寒い朝。

あなた「雪だるま作れるほど雪ないよ?」

りょう「集めればいいやん。ちょっとつもってるし。」


画面の中のりょうは大人で頭が良さそうで、
穏やかな人なのに、

カメラのないところではまるで子供のようだった。

ホームセンターにまで行って材料を買い込んで、

雪を集めて作った手の平サイズの雪だるまを
嬉しそうに写真に撮って笑っていた。

自分の雪だるまよりも小さい雪玉をふたつ、
私に差し出して「ほら。」って言われた。

作った雪だるまは少しだけ不格好で、
でもりょうの作った雪だるまよりもずっと
上手くできていた。

あなた「りょうは絵だけじゃなくて雪だるまのセンスもないんだね。」


りょう「あなたがうまいんだって。笑」

あなた「雪だるま王?」

りょう「そう、雪だるま王。笑」


2人で笑いあって作った雪だるま。

どうしようもなく可愛く見えて、
きっと今日中に溶けてしまうと知っているのに
残したいなんて思ってしまう。


あなた「…溶けちゃうのもったいないね。」

りょう「仕方ないやん。自然の摂理。」

あなた「冷凍庫に入れようか。」

りょう「また来年、今年降ったらまた作ればいいやん。」


りょうのTwitterに載っていたのはりょうの
だけだったけど、「来年」って言葉につい
口元が緩んだ。



夕方、青い塗料だけが地面に残っていて、
あぁやっぱり溶けちゃったんだ。って、
少しだけ悲しくなった。


あなた「ねぇ、りょう、本当に来年も一緒に作ってくれる?」

りょう「…うん、多分ね。」


口元の緩んだ「来年」というワードよりも、
現実的な「多分」は分かり切っていたことだった。


それでもまだ期待してしまうのはりょうが
好きだから。


りょうの雪だるまよりも小さいはずの
私の雪だるまは少しだけ残っていて、

私たちの気持ちの重さのようだと悲しいのに
笑ってしまった。

りょうの気持ちが溶けて無くなる前に、
来年の冬が来ますように。

青い地面を見てただ、そう願った。

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