朝、けたたましい目覚ましを静かに止め僕は起床した。
今日は朝練もあり少し早く起きなければいけなかったのだが…
頭がズキズキと痛み喉も痛い
けど、休むわけにもいかないんだよな。
そろそろ先輩方の最後の卒業試合だ。それにありがたいことに僕も出させてもらえることになった
だから練習を休むわけにもいかずに重たい体をベッドから起こし学校の支度もする。
そして学校へ行く準備を済ませ家を出発する。
まぁ、きっと学校行って部活やってすぐ帰って休めばよくなるだろう。
少しするくらいなら体調も悪化しないだろうし大丈夫と僕は見た
通勤するサラリーマンの人と通学生でいっぱいな電車に乗り込み手帳を見る
すると今日はろふまおの収録が今日はあると記入されていた。
そういえば…と思い出し僕は肩を落とす
けど、これもやはり僕一人のせいで収録をなくすわけにはいかない
社長や不破くん、甲斐田くんにも迷惑がかかることはもちろん、リスナーにも迷惑がかかる
6本どりだっけか。と憂鬱になりながら自分に喝をいれる。
ここで僕一人のせいで他人に迷惑をかけてどうする!剣持刀也!こここそお前の頑張るとこだ!
そんなことを考えていたら駅に着いたので人の間を通り抜けて改札へと進む
やっとのことで改札を抜けるころには人酔いをしたのか起きたときより体調が悪くなったように感じた。
けれど、病は気から。こんな言葉もあるくらいだ。
気にしないようにすればきっと治っている。そう信じたい
早く学校につきたい。という一心で足を動かしていると気づくころには校舎の前に立っていた
体育館にそのまま行き同じ部活の奴に挨拶をする。
なるべく体調が侮られないように極自然に。
体調を崩してる状態で部活に参加するとひどく顧問から怒られる。
だからバレてはいけないのだ。
重たい防具を付け竹刀をケースから出す。
その重みとともに僕の気分も重くなっていった。
その日の部活のメニューのメインは練習試合だった。
相手は三年生の先輩。
僕も気を引き締めて試合に臨む。その時には体調のことなど頭から飛んでいた。
だが、結果は練習試合は何回かやったが僕は全部負けた
いつもなら勝てる先輩や同級生にましてや一年生の後輩にも。
色んな人から大丈夫か?と心配される
僕は寝不足という適当な理由をつけて愛想笑いをとった
そういえば僕は体調不良だったということをその時に思い出した
顧問も僕のことを少し気にしたようでいつもより少しだけ早く部活は終わった。
そして急いで着替え教室に走った。
頭はじんじんして少し視界がくらむ。
だが、こんなとこでへばるわけにはいかない。
席について真面目に授業を受けた。
形だけは。
僕はそれどころじゃなく、聞こうとはしているのに思考も回らないし耳にもあまり入らなかった。
そして流石にやばいと思った5時間目。
僕は「頭が痛いので」と先生に伝え保健室に向かった。
熱は教室で測ってくるというシステムだったので僕は少し偽装した。心配されて早退endは絶対にできない。
本当は38.7°だったところを37.2と偽った
保健室の先生も僕のいつもの行いもあってか「あらそう。」としか言わなかった
ベッドに潜ってすぐに僕は眠りに落ちた。
目が覚めたのは5時間の終了を告げるチャイムの音だった
大きい音にびっくりして僕は起きた。
先生は「おはよう。もう大丈夫?」とこっちに視線を向け質問をしてきた
「はい」とあまり変わってはいなかったが返事をして早足で教室に戻った。
だが、寝たおかげか少しだけ6時間目はよく授業を受けられた
頭が痛くのどが痛いのには全く変わらなかったが
そして授業とHRが終わり友人にゲーセンに行かないかと誘われたが用事がある。と断り急いで駅に向かう
ちょうどのタイミングで電車が来てくれたのでそのまま乗り込み電車は出発する
電車に空席はなかったので立ったまま揺られて。
あと何駅と数えながら電車内の広告を眺めてると事務所がある駅に着いた。
集合時間には間に合いそうだとほっと胸をなでおろす
歩を進め事務所まですたすた歩く
早めに行けば少し休めるだろうと思いながら
事務所についてエレベーターに乗る。
そして収録のスタジオがある階で降り廊下を進む。
確かここだよな。と思ってドアを開けるとそこには社長の姿があった。
暖かい笑顔で僕を迎えてくれた社長と対象に僕はひきつった笑顔で挨拶を返す
もちろん気持ちとしては笑顔で返したつもりだが自分自身でもわかるほどに表情はひきつっていた。
すると勘が鋭い社長は
と優しく話してくれる。
いつもなら落ち着くその声も今の僕にはがんがんと頭の中で響き頭痛が高まっていくだけだった
その場から逃げたかったのでトイレという適当な理由をつけて逃げた。
心の中では社長に強く謝りながら
廊下で少し休める場所はないかと探していると突然今までとは比にならないような痛みに殴られる
びっくりしたのと強烈な痛みで僕は足元から崩れていった
でも、きっとここで座っていたらスタッフさんやライバーさんに見つけられるだろう
なんせここは廊下のど真ん中だ。
絶対に声を掛けられる
それをされると困るのだ。
ぼろぼろな体を動かして近くのトイレなで移動する
正直トイレは誰かと会いそうであまり行きたくなかったのだが幸いそこのトイレにはだれにもいなかった
トイレの便座に座ってそのまま壁にもたれかかった
息を切らしていると強い吐き気が僕を襲った
さっきまでは頭痛とのどの痛みしかなかったのに吐き気も加わるとなると流石にやばい
トイレだったこともあり僕は便器の中に顔を入れた
びちゃびちゃと汚い音を立てて吐捨物が口から出てく。
やばい。吐き気が止まらない。
時間を少しちらりと見るとあと5分もたたずに始まってしまう
のどまででた吐捨物を飲み込んでトイレの水道で口をゆすいだ。
よくなるどころか酷くなったところでスタジオのドアを再度開いた
心配そうに僕の顔を見ながら社長は話す
何か他にも言いたげな様子だったが社長はその言葉を飲み込んだようですぐさま話題を変えた
会話に参加していないと怪しまれてしまう。
無理矢理乾いた笑い声をあげた
意識は朦朧で視界はちかちかとする
とりあえず収録が一本終われば休憩がある。
頭痛薬を飲めば少しは収まるだろう
今日は家に薬を忘れてしまったから近くのコンビニにでも買いに行けばいいだろう
そうすれば残りの収録もきっと乗り切れるはず…
そんなことをぼーっと考えていると大きな足音が聞こえてくる
甲斐田君だろう
入ってくるなりスライディングどけ座をする甲斐田君。
あきれながら社長と不破くんが甲斐田君に近づいて笑いながら怒っている
僕にはそんなことをする気力もなくただその場に立っているだけで精一杯だった
その一声でみんなの気持ちにスイッチが入る
明るい照明がたかれカメラが一斉に僕たち4人に向けられる
それが僕の体へと負担が重くかかる
ゲストの先生にも来てもらっているというのに口数は少ないし笑いもしない
ほとんど何もできなかった僕だが3人がとても楽しそうにカバーしてくれるからきっと没にはならないだろう
申し訳ない。
3人とスタッフさん、先生のおかげでうまく収録は終わった。
スタッフさんの「10分休憩してもらってそのあとまた再開しまーす」という声で僕らの肩の荷もおりる
そして僕はそれを合図にコンビニに行こうと思い財布を鞄からだしドアを開けようとした
甲斐田君の少し大きい声にびっくりして振り返る
そこには3人が少し怒っているような顔で仁王立ちをしている
頭がズキズキと痛み割れるような感覚が僕を襲う
早く楽になりたいのにみんなのことを無視するわけにもいかない
倒れそうだが根性だけで会話を僕は続行することにした
社長がずいっと一歩踏み出してきて僕は圧に負け一歩後ろに下がる
あいまいな表情で歯切れの悪い返事をする
するとその瞬間視界がぐらっと揺れる。
何事だ、と僕は戸惑っていると自分より高い位置に3人がいることに気づいた
倒れた…?それとも、倒された…?
とぎれゆく意識の中三人の焦った顔が見えた気がした
社長視点
剣持さんが倒れた。
そりゃそうでしょう。今日は来た時から少し様子がおかしかったのですから
ですが、それに私は気づいていたというのに…
自分の無力さを実感する。
不破さんも甲斐田さんも戸惑っている様子だ
状況も状況。私が最年長だし動いたほうがいいのでしょう
不破さんのほうが私よりしっかりしているな。
なんてことをこの状況でも考えてしまう
大人は多いほうがいいことにはきっと間違いない
でも、自分たちでもできることはやっときたい
合図とともに剣持さんを持ち上げる
高校生らしく、私たちに比べると成長過程の若々しい体
それが苦しそうに顔を歪めながら息をしている
頭も驚くほどに熱い。
朝か、学校からずっと気づいていたのでしょう
けれど剣持さんのことだから自分が休んで迷惑をかけるわけにはいかないとでも思っていたんでしょう
これは、私が言えたことでもないですが怒らないとですね。
でも、まずは体調が回復させるのが一番重要。
説教はそのあとにしましょうか
手際よく作業をしている不破さんの横に甲斐田さんが並ぶ
持ってきてくれたのは冷えピタの箱とタオルブランケット、あと風邪薬のようなものだった
ろふまおの収録に来ている人で車を持っているのはほとんどいない
このくらいしか私は役に立てないだろうと思い即座に名乗り出る
震える声で剣持さんは言葉を発しながら目を開ける
少し強く言ってしまったか?
けど、伝わったならよかった。
申し訳なさそうな顔で剣持さんは下を向いた
剣持視点
起きた瞬間色んな大人が僕を取り囲んでいてびっくりした。
そしてダメもとだったが収録をしようとソファから立とうとすると社長に阻止されてお説教。
多分これはあとで説教されるんだろうな…やめとけばよかった
社長は僕を何だと思っているのだろう。
その心配ようが少し面白くて笑ってしまった
そういえば痛みももう消えたなと思う
甲斐田君と不破君も看病してくれたっぽいし感謝を伝えなきゃな
社長は車を出してくれるのか部屋から出て行った
泣きそうな弱弱しい声で甲斐田君が僕に怒ってくる。
不破君が渡してくれる薬を受け取り喉に流し込む
流石社長
あとで自分の口から再度感謝の言葉を述べよう
ちょうどのいいタイミングで社長がスタジオのドアを開けそう言う
案内してくれる社長についていき車に乗り込む
もう治ったし病院なんていいんだろうに心配性過ぎない?みんな
こんな調子で車の中でこっぴどく怒られた。こっわ
ちょっと次からは気を付けよう。
そして僕の体調不良の原因ははやり風邪のようだった
一日、二日しっかり休めば回復するだろうとのこと。
あんまり重症じゃなくてよかった
そして、病院からそのまま家まで社長に送ってもらった
もちろん次に体調を崩したときはしっかりと収録を休んだ僕なのであった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。