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隼斗 side
昨日、俺の恋人の紗希が死んだ。
病気とかそんなのじゃなくて、ただの事故。
そう、事故…
「のはずなんだけどなぁ…」
居眠り運転で信号無視した車に跳ねられ救急車で運ばれたが治療されて数十分で息を引き取った。
こんなの誰も予知していなかったから、みんな悲しんだり事実を受け入れられなかったりで、前を向いているやつなんて本当にごく1部だった。
かく言う俺も
紗希が居ない世界でなんて生きていけないのも事実で。
紗希を追いかけて後追い自殺なんかしようかと考えていた時に
「隼斗くん、」
紗希の親友の結衣に渡されたのは
「これ、紗希のカバンの中に入ってたやつ…」
紗希の書いた遺書だった。
「…は?遺書…?」
この状態で俺の頭の中はパニック状態だった。
事故ってのは故意に出来るものじゃないはず、しかもこの遺書はあの事故が起きるずっと前に書かれているやつだった。
じゃあなんであるんだ?
「…隼斗の言いたいことは分かる、俺達も“これ”見つけた時パニックになったからな。」
「でも、1人ずつに書かれているみたいだから、隼斗くんの分、ちゃんと渡したから、ね。」
「…あぁ、ありがと。結衣、翔太。」
「っ…隼斗!!!!」
「後追いなんて、絶対、辞めろよ…!!」
「…おいおい翔太、何言ってんだよ。当たり前だろ?俺は“あの”紗希の彼氏だぞ?笑」
ただ、その肝心な紗希がいなくなったら、どうすればいいんだよ。
まだ、お前の誕生日も祝えてなかったのに。
プレゼント、渡そうと思ったのに。
「…帰ったら読むか。」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!