第4話

3,965

2020/03/11 17:39

男

ﾊｧｯ、ﾊｧ、...

私

ん、ぁ...っ




彼と出会ってから2週間

でもあの後彼が店に来ることはなくて

今日もまた知らない男と体を重ねる


ただ前と違うのは

他の男が気持ち悪く感じる

この仕事を6年もやってるもんだから

もう慣れていた

最初は痛くて気持ち悪くて

毎日吐いていた

でも2ヶ月ほどで慣れた



でも彼と出会ってから


他の男と体を重ねる度に


彼が思い浮かぶ



彼の暖かい手が

彼の赤い顔が

彼の表情が





いつの間にか








彼の存在を求めてる私がいた

私

ありがとうございました

男

また来るね♡

私

はい！


また偽りの笑顔で男と接する

でもこれは

生きていくためのこと

私を救ってくれたすず姉のためだから

やらなければいけない

やらなければ嫌だ


すず姉がいなければ

多分私夜の街の中で死んでたから

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

私はひと仕事を終えて

裏で休んでいた

すず姉さん

お疲れ様〜

私

あ、すず姉お疲れ様です！

すず姉さん

あのさ、無理だったいいんだけど...

すず姉さん

あなたちゃんがいいって言う客がいるんだけど、体力大丈夫？

私

全然大丈夫ですよ！

すず姉さん

この前来てたあの若いイケメンさんなんだけど....

私

わ、若いイケメン？


この店に来るのは中年の人が多い

その中で若い人といえば



彼しか思い浮かばなかった

すず姉さん

お願いしていい？

私

はい、今行きます！

すず姉さん

ありがとねぇ〜！







もし、もし彼だったら

私を本当に選んでくれたなら


そんなの


無駄に緊張しちゃうじゃん


ｶﾞﾁｬｯ＿＿＿

私

こ、こんばんは〜...

恐る恐る部屋を覗くと

？

...よっ


彼がいた

私

...っ！

私

久しぶり！

？

あれ、そんなに久々だっけ

私

多分2週間ぶりくらいじゃない？

？

そんなの最近じゃんw

？

そんなに僕を待ってたの？w

私

...そうだけど、//

？

.....え

？

冗談で言ったつもりだったんだけど...
え？

私

え、あ、ごめんなさい！//

？

なんでそんなに照れてんのw

？

やめて僕が勘違いしちゃうからww

私

勘違い？

？

うん、

私

...？

？

あ、ごめん忘れて



へ

何を言っているんだこの人は

私

というか、すずね...上司の方から聞いたんだけどさ

私

私がいいって言ってくれたって本当？

？

は...っ？//

？

な、なんでそれ

？

え、は？あの人言ったの？

私

まぁ？

？

...まじかよ//

私

私がいいの？本当？！


なんだか嬉しかった

彼と出会ってから2週間もの間

私だけが求めていると思ったから

？

まぁ...//

？

お前がいいっていうのもあったし

？

ちょっと話したいこともあったしね

私

話したいこと？

？

うん

私

...なんですか？


彼と出会って2度目の会話

なのに急に話したいことって

なんなんだろうか

？

君さ、苗字なんて言うの？

私

苗字？

？

そう、苗字



え、どういうこと？

私の苗字なんか聞いて、どうするの？

私

なんで聞きたいの？

？

まぁ、色々と

私

...そんなんじゃ教えても意味無いじゃん

？

意味あるんだよ、僕にとっては

私

どういうこと？

？

...そんなに教えたくない？

私

いや、そういう訳ではないけど


私に興味持ってくれるのは嬉しい

でも

なんでそんなに知りたがるの？

私

私の苗字を知って意味あんのかなって

？

...知りたいんだよ、普通に

私

私の苗字を？

？

そう

私

だから、どんな意味があるのよ

私の苗字なんて知ってもどうにもならない

私の家族は今どこで何をしているのかも分からないし

知りたくもない

あんな奴らのことなんか


だから

あいつらと血が繋がってるのも嫌

苗字が同じなのも嫌

6年も会ってないし



虐待をする親なんて

親じゃない

？

.....興味があるから

私

興味？

？

普通に興味のある人間は、色んなこと知りたいって思わない？

私

お、思うけど

私

私は仕事でここにいるし、それ以上の関係じゃないじゃん

私

私達、言っちゃえば体の関係でしょっ？


自分でも言ってて辛かった

そう、たった体の関係


所詮それで終わり

？

...そっか

？

所詮僕はそう思われてたのかぁ、

私

あ...ちが、そうじゃなくて

？

なに？

私

私、昔からこんなことやってるから男の人信じられないって言うかさ

私

ずっと好きって言われてても、それは本当の好きじゃなくて

私

歪んでるっていうか、求めてるのは私の体だけだから...さ、w

私

ここに来る人はみんなそれ目的だって分かってるし...

？

違う！！

私

えっ...？

？

あ....いや、

？

僕は違うよ...？

？

君の体だけ、とかそういうのじゃなくて

？

...てか、だったら僕最初ヤるの拒否してないし

私

そっか、

私

なんかごめんね

？

いや、謝んなよ

私

...なんか優しいね

？

ぼ、僕？

私

うん

私

今までの男とは違う

？

お、おう...


本当に優しいんだな、この人

ってまた騙されてるだけかもしれないけどさ

でもなぜか


彼だけは信じてみたいと思えた

私

...加藤。

？

え、...

私

加藤あなた

私

私の名前

？

い、いいの？

私

なんか...あなたは信じたくなった

？

...ガチで？

私

うんっ

？

.....やった！！！

彼の顔がぱあっと明るくなった

可愛らしいなぁ

？

ありがと！！

私

んふふ、w

私

あ、そういえばあなたの名前は？

？

そっか、言ってなかったわ

？

...どっちがいい？

私

どっちって？

私

え、名前2つあるの...？

？

あ、いやそうじゃなくてww

？

僕の本名と活動名だよ


どっちかかぁ...

本名は知ってみたい気持ちはある

でも、それは踏み込みすぎかなぁ

ファンの子達はみんな活動名しか知らないわけだし

なんか悪い気もするな


活動名知れば調べられるし

私の知らない彼のことも知られる


って考えると...

私

活動名がいい

？

おっけ

？

僕の活動名はね、

？

＿＿＿＿＿＿＿＿＿

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編集部コメント

主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした！<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。