第12話

花は咲けずに
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2019/05/06 12:09
「寝坊したっ!」

智花は私より駅一つ分遠くに住んでいる。だから早く起きなければならないはずだったのに。
数日過ごしてこの生活に慣れたから、気が緩んでいたのかもしれない。

お母さんに悪いから、朝食は少しでも食べていきたい。
急いで朝食のトーストを齧る。

「珍しいね、寝坊なんて。疲れてたの?
ちょっとこの時間だと厳しいでしょ。
駅まで送るよ?」

キーホルダーのついた車のキーを持ち出しながらお母さんが聞く。
本当は送って行ってもらいたかったが、まだなんとなく悪い気がする。

「走っていくから大丈夫!ありがとう」

なぜか不安そうな顔だったが、それを振り切って先を急ぐ。
歩いて10分、走れば5分かそこらでつく。
電車が来るまであと8分。いける。

家を出て、細い道を走り抜ける。信号がないことは確認済みだから、このまま真っ直ぐ行けばいい。

しかし、思ったよりも体力がもたない。
電車にはギリギリ間に合ったものの、動悸はひどく、荒い呼吸が治らない。
頭もズキズキと痛んだ。



次の駅で乗ってきた智花には「大丈夫?」と心配された。

「大丈夫」とは答えたものの、学校に着くまで心臓はうるさいままだった。

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