第13話

散るのを待つのみ
209
2019/05/06 12:14
あの一件だけなら、智花の体力が予想以上になかったってだけで済ませられたが、あれから日に日に不調が増えていく。

急にめまいがしたり、食欲がなかったり。
普通に歩いていただけで疲れきってしまった時は流石にヤバイと思った。

おかしいと思って病院へと行くことにした。
いくつかの簡易検査をした後、智花の主治医に対面する。
迎えてくれた主治医は、深刻そうな表情をしていた。

「最近吹っ切れたように明るくなり、調子もいいようなので大丈夫だとご両親から伺っていたけれど、流石に無理しすぎですよ」

諭すように話しかける主治医の言葉が私はなんのことか全くわからない。

「な、何かありましたっけ?」

忘れているふりをして質問する。

すると主治医は不思議そうな顔をして、聞き慣れない病名を淡々と言い放った。
智花は数年前からこれを患っていたこと、もっと発見が早ければ治ったかもしれない病気であったこと、精神疾患を併発していてわかりにくく、発見段階でかなり酷いことになっていたことを説明された。

「助かる見込みもゼロではないから頑張ろうね」

そう言っていたものの、主治医は手元の資料ばかり見て目を合わせてくれなかった。
それは、その言葉が真実ではないことを物語っていることを感じさせた。




かなり久しぶりに行ったという精密検査で、状態がかなり悪化していることがはっきりとわかった。
深刻な状況を心は受け止めきれず、頭は混乱している。


智花も私に隠し事をしていたんだ。
とりあえず連絡をしようとしたが、どうやっても連絡がつかない。
焦っても、もう遅かった。

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