「おい!お前ら!!大変だ!!3年の雛先輩と天毬先輩がメイドやってるぞ!!」
文化祭当日の朝、準備をしていた時に響く声。
「うっそだろ…!?」
「お〜?なんか騒がしいけど楓馬なんでか知ってるか……って、また顔怖くなってんぞ…」
鈴木が呆れた顔で楓馬のふくらんだほっぺたをつっつく。
「やっぱり皆が見るなんて嫌だ〜」
「雛さんのことだなこりゃ…」
朝学校に来た時から雛のメイド服姿は噂になっていた。
姿を見た人は揃って可愛すぎる、天使だなどを言っている。
(ひなさんが可愛いのは当たり前〜…)
嫉妬深いのは相変わらず。
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文化祭が始まり、一般の方が沢山来て賑やかになったのだが。
「あの人男子…!?可愛い…」
「俺男の方が好きなのかも……」
通り過ぎる人たちが口を揃えて言う。ひなさんと天毬さんのことだろう。
「あ〜集中できない〜」
「おいおい、ちゃんとしろよ?俺今から自分のお店手伝いに行くから……あ、雛さん達のお店すっげー人並んでるらしいよ」
「っ、それは聞きたくなかった〜」
鈴木は何気なく言ったのだろうが、その言葉がとどめになってしまった。
行くしかない。
「ひなさんが気になるので一回抜けます〜」
「え〜!?楓馬目当てで来てる人多いのに!!」
「う〜ん……あ、皆〜俺少し抜けるけどまた戻ってくるから待っててね?」
お願いっと手を合わせてお客さんに言う。
『もちろん待ちます!!』
女子のお客さんが一斉に言うが、そんなことなんてどうでも良い。だってひなさんが一番気になるんだから。
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▽▽
(楓馬のやつほんとひなさんのこと好きだよな〜)
鈴木は今朝のことを思い出していた。
(後でポッ○ーやるか……って、仕事しないと)
「たい焼き売れてます〜!!是非見てください〜!……っあ!?」
お客さんを呼ぶためにチラシ配りをしていた時、ドンッっと人にぶつかってしまう。
「つ!すみません!大丈夫ですか?……え?そんなに痛かった…!?ごめん!」
ぶつかった人は涙を流していた。高校生だろうか。
「…いえ、大丈夫です。これは違うので…。こちらこそごめんなさい…」
「ええっと……なんでかわかんないけど…取り敢えず涙拭いて?ほら」
優しくハンカチで拭ってあげる。
「ははっ…ありがとうございます。……あ…これ洗濯して返します。……お名前聞いて良いですか?」
「気にすんな気にすんな。…俺?俺は鈴木。鈴木こた。お前は?」
「琥珀。高校生です……こたさんですね」
「琥珀か…良い名前だな。…まぁ無理はするなよ?またいつかあった時話聞いてやるよ」
この出会いから鈴木の運命が変わる。
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▽▽
(わ〜…本当に沢山並んでる…)
ざっと20人くらいだろうか。教室の外に列を作っている。
入れるか心配になり、少し様子を見る、と受付の先輩に言うと、何を察したのかすぐに入れてくれた。
中に入ると紅茶やお菓子のいい匂いがする。
「あっ、ひなさん〜」
「っ…!いらっしゃいま…せ……ぇ!?」
ひらりとスカートをなびかせて振り向いてくれたひなさんは、俺を見ると顔を赤らめた。
存在が薄いと思われた鈴木が!!こちらは書くか書かないかまだ迷っています…。
受けちゃんのメイド服凄く好きです。
いつもいいねありがとうございます!!
次回も文化祭編です。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!