あの人は基本人を頼らなかった
一人で生きて、面倒ごとは一人で潰して来た人だった
あの人にはそれが出来る力があった
権力なんて汚い力じゃない、純粋な力に愛された暴君
叫びたかった
負け確試合なんて目に見えて分かってただろって
なんで手を引いてくれなかったんだって
でも、この人は不可能さえもねじ伏せて生きてきた人だから
私はこの人の最初で最後の負けを
ちゃんと受け入れなきゃ行けない
アイツ、が誰かなんてすぐ分かった
こんな遠回しな言い方しか出来ない、愛情の与え方を知らないこの人の最初で最後の頼み事
初恋の人の、頼み事だった
グラウンドで虎杖と体術の鍛錬をする彼をじっと見つめる
そして、あの人の後釜になるであろうあの子も
真希も真依も、恵も
全員分の呪いを私が背負って逃げ出せたなら
守るなんて言い訳をつけて、全てを捨て去った人間が言うことじゃないか
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!