第68話

【両想い編12】行くな…修学旅行②
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2021/09/15 07:00
~実弥サイド~


修学旅行の京都────
不死川 実弥
不死川 実弥
着いたぞォ

自由行動で、俺らが
これから行くのは伏見稲荷ふしみいなり

千本以上のあかい鳥居が、
迷路みたいに連なる山。
あなた
わぁ…!
見渡す限り鳥居だね!
奥が見えないよ
不死川 実弥
不死川 実弥
壮観だなァ…
思わずあなたの手を握った。
禰豆子
禰豆子
粂野くん、、、
粂野 匡近
粂野 匡近
うん、、、
二人が気を利かせてくれて
俺とあなたは二人になった。

匡近はなんだかんだ
いつも俺を応援してくれる、心強いヤツ。

ありがとなァ。
不死川 実弥
不死川 実弥
少し歩くかァ
あなた
うん!
朱い鳥居に隠れては顔を出し、
はしゃぐあなた。
あなた
写真撮ってぇ!
不死川 実弥
不死川 実弥
おう
ぴょこぴょこと顔を出すあなた。
かわいいのが撮れた。

スマホの壁紙にすっかな////
あなた
一緒に撮ろ!
不死川 実弥
不死川 実弥
ん…
カメラを手にしたあなたと
ほっぺがくっつく。

思ったより冷たい。
冷えたか?
不死川 実弥
不死川 実弥
あったかいお茶飲むかァ?
あなた
うん!ちょっと冷えるね
あなた
もっと行ってみよう!
不死川 実弥
不死川 実弥
ああ
いくつもの鳥居をくぐり、
人の気配のない池に出た。

このあたりから鳥居は小さくなり、
道も細く、分かれている。
不死川 実弥
不死川 実弥
マジで迷路だなァ
俺はあなたにおはぎを食わせようと、
いったん、カバンを置いた。

すると…





シャラン…



どこからか鈴の音がした。
不死川 実弥
不死川 実弥
…あなた?
あなたがいない。
不死川 実弥
不死川 実弥
どこだ!?
あなたはおろか、周囲には
人っ子ひとりいない。

世界に俺ひとりになっちまったみたいに。
不死川 実弥
不死川 実弥
あなたっっ!!??
俺は走った。

いくつもいくつも鳥居を抜けたが
景色が変わらない。

同じとこを走ってやしないか?
あなたはどこだっっ…!?
不死川 実弥
不死川 実弥
頼む、出てきてくれっ…
額から汗が滴り落ちる。

シャツがひんやりと、
不快に冷たくまとわりつく。
不死川 実弥
不死川 実弥
どこにいるんだァ…
あなたがいなくなるなんて耐えらんねぇ…。

俺の大事な人が俺の前からいなくなるなんて
やめてくれ…もう…
失いなくねぇんだ…。
不死川 実弥
不死川 実弥
頼む…いなくなんなよ…
ん…あれは…
不死川 実弥
不死川 実弥
あなた!!!
あなたの細い背中が見えた。

誰かに手をひかれて
薄くなってゆく。
不死川 実弥
不死川 実弥
行くなっ…
不死川 実弥
不死川 実弥
俺を置いていなくなるなっっ
不死川 実弥
不死川 実弥
頼むっ…
すると、後ろからガシッと
誰かに抱きつかれた。
不死川 実弥
不死川 実弥
…ッ!!??
あなただった。
あなた
実弥ってば、
どんどん行っちゃうんだからッ
不死川 実弥
不死川 実弥
あなた?
本当にあなたなのか!?
あなた
もー、どしたの
置いていかないでよねッ
気がつくと、遠くに行ってしまう
幻影は消えていた。

目の前には紛れもなくあなた。
俺の大好きなかわいい…
不死川 実弥
不死川 実弥
どこにも行くなよなァ?
よかった────

安心して腰が抜けてしまった。
あなた
何言ってんのもー
こっちのセリフだよ!
あなた
早くみんなのとこ戻ろ!
不死川 実弥
不死川 実弥
ああ、そうだな
ぎゅっ…と抱きしめたあなたは
今度はあたたかかった。
不死川 実弥
不死川 実弥
…この鳥居のせいかもなァ
あなた
何か言った?
不死川 実弥
不死川 実弥
何でもねぇよ
あなた
ふふっ、へんなの!
ここが彼岸と此岸をつなぐ
場所なのだろうか…。


いや、


あなたを失いたくないっていう
俺の強い気持ちが見た、
幻影だったのかもな。


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