~あなたサイド~
旅館の和室に敷かれた布団で、
手をつないで、そっと実弥に添い寝をした。
ほのかに実弥の手は、まだ熱を帯びている。
グイッ…
実弥に布団の中へと招き入れられて、
ぴったりと寄り添う形になった。
部屋にふたりとはいえ、修学旅行だ。
なんかいけないことをしている気分////
すぐそばで見つめあうと、
実弥の息づかいが、くすぐったかった。
こうして見ていると、実弥の瞳には
不安の色と安堵の色が、交互に現われる。
ほっぺを両手でぎゅうと包むと
実弥は恥ずかし気に顔を背けた。
目を背けたまま続ける。
実弥はふとこうやって、
自分を押し殺してしまうところがある。
離しちゃダメなのは、わたしの方だ。
実弥の心が、ふっ…と落ちてしまわぬよう
絶対につかまえてないと。
実弥の顔が、ふにゃっとほどけた。
なんて優しい顔で笑うんだろう、この人は。
そこまで言いかけて、急に照れてまた顔を背けた。
言うつもりないのに言っちまったって顔!
ふいに視線が戻され、
真剣なまなざしに、心臓がどきりと跳ねた。
そして、どちらからともなく…
吸い寄せられるように、キスをした。
柔らかなくちびるが心地よい。
お互いの想いが同じということを示すかのように
舌を絡めあう。
魂がキュっと抱きしめられているかのような
激しいけど優しいキス。
角度を変えて、何度も
実弥のくちびるが押し当てられた。
そのたびに熱を帯びて、情熱が流れ込んでくる。
実弥の手が汗ばんで、息づかいがだんだん荒くなる。
その時だった。
コンコン…
ガラッ
や、やばいっ…!!
先生達だ!!!
わたしはとっさに耳元でささやいた。
実弥が小さくうなづく。
さっきとは別の意味でドキドキが止まらず、
布団の中で手をつないだままの私たちは
寝たふりを続けるので精一杯だった。
とても…さっきまで
キスしていましたとは…ね/////
Next【両想い編18】幸せ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!