~あなたサイド~
京都、保津川の河原でわたしたちの
目の前に現れたのは、あの童磨と猗窩座だった。
ゴスッ
いつになく実弥が殺気立っていた。
今にも刺しそうな目つきで睨んでいる。
グイッ…
実弥がわたしの肩を引寄せた。
不意に寄せられた腕が力強くて…。
童磨がニヤニヤと続ける。
最低!!
実弥は愛しい人を失うことに
トラウマがあるっていうのに…。
傷をえぐるような言い方…。
童磨、許せない。
返り討ちにあってもいい。
ビンタのひとつでもしないと腹がおさまらない。
わたしは覚悟を決めて、童磨に詰め寄ろうとした。
…とその時、
恋雪と呼ばれた女の子は、
およそ鬼舞辻学園に相応しくないほど、
笑顔がかわいらしく健気だった。
恋雪さんはにっこり笑うと、
猗窩座とそっと手をつないだ。
猗窩座の頬がほんのりと染まるのを、
見逃さなかった。
つながれた実弥の手に、
ぐっ…と力が入った。
実弥の怒声が河原に響き渡る。
そう一気に言い切ると、
まわりの視線を一点に浴びている実弥は
恥ずかしくなったのか、顔を手のひらで覆った。
騒ぎを遠巻きに見ていた観衆からも
パチパチと手をたたいたり、
応援が寄せられた。
顔を真っ赤にした実弥が、
ザブザブと川に入った。
頭を突っ込んで、川につけている。
上着を脱いだ実弥のまわりに、
モミジが、ひらひらと舞い降りている。
すごく絵になってて…。
ちょっと見惚れてしまった。
「Next 【両想い編15】熱…」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。