トミーside
強引に部屋に侵入すると、顔を見られたくないのか背を向けたカンタがいた
出来るだけ優しくカンタに声をかけるがカンタは背を向けたままで鼻のすする音だけが部屋に響く
いつもより頑なに言わないカンタ…カンタの一番の力になってあげたいと思っているのにうまくいかない…
そう言って、カンタの顔を覗き込んでみる、少し赤い鼻に、泣いたせいか少し充血してるがカンタの潤んだ瞳はとても綺麗だと思った
そう言われた瞬間、どん底に落ちた気分になった…俺は力になってあげたかった、しかしそれがカンタの迷惑だったのかと…
俺はそう言い残して、これ以上拒否られたくないと思いと早くここから立ち去りたいという思いを持って、立ち上がってカンタの部屋から立ち去ろうとした
部屋から出ようとする俺の服の裾をカンタが掴んできた瞬間、なにかの衝動に駆られ、俺は振り返り、気づけばカンタを強く強く抱きしめていた
上目遣いをしながら、頼りない声で問いかけてくるお前があまりにも愛おしくて
理性が限界になってきている…あまりにも可愛すぎて…するとカンタは控えめに腕を俺の背中にまわしてきた…こういうところだ…
わざと煽ってんのか…
いっそのこと言ってしまいたい…鈍感すぎるお前に思い知らせてやりたい…頭の中俺だけにさせたい…でも、そうすればお前はきっとすごく困るだろう…
唐突に出てしまった言葉…昔、"お前に嫌われなければ生きていける"と言ったことがある…昔は何も思わなかったのに今ではその言葉を口にするだけで意識してしまう…
でも、俺だけが意識してるだけだと思っていると俺の目の前には顔を真っ赤に染めたカンタがいた
呆然として、耳まで真っ赤にしているカンタに俺はわしゃわしゃと髪がボサボサになるほど頭を撫でた
険悪な雰囲気からいつもの俺達のような和やさになった、つかの間、沈黙になった…俺はひなとのことを言うなら今だと思い、決心して口を開いた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。