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第2話

2度目の出会い
9
2019/12/30 05:53
桃花
桃花
あ…はい。
奏斗
奏斗
おはようございます!
ヘアセットとかメイクとかしてもらって、スタジオに入ると、見たことの無い女の子がセットの近くにいた。
奏斗
奏斗
ねえ、あの子は?
マネージャーに聞くと、
マネージャー
マネージャー
ああ。ヒロインの子。
と短く返された。
忙しそうだったので、何も聞かないようにした。
奏斗
奏斗
おはよう。俺、奏斗です。
ヒロイン役なんだよね?
よろしく。
今回のドラマのあらすじは、生徒と先生の恋の話で、俺が先生役。ということは、今目の前にいる子は俺よりも年下だろう。
桃花
桃花
桃花です。よろしくおねがいします。
そう言うと、またセットを見つめ出した。
不思議な子だな。
そう思った。
表情が全く変わっていなかった。セットを見るその目すら、色を灯しておらず、考えていることが読み取れなかった。
それに、桃花ちゃんのオーラだって。
まるで、お人形のよう。
顔が整っていて、髪はさらさら。
手足は細くて、肌の色は白。
でも、表情は崩れない。動かない。
…。
監督
監督
よーい、!
たくさんの視線が刺さる。
撮影がはじまった。
桃花
桃花
「先生!宿題の量多いよー」
え?今、目の前にいるのって
桃花ちゃん…?だよな。
先程まで微塵も動かなかった表情は
仮面を被ったかのように別人だった。
奏斗
奏斗
「そんな事言わない!
お前は特にヤバいんだから
ちゃんとしろよ!」
なんとか言葉を思い出せた。
桃花
桃花
「はーい。」
笑いながら去っていった。
奏斗
奏斗
「はぁ…ホントに、
俺の気持ちも知らねぇで」
髪をかきながら、台詞を言う。
…。
監督
監督
カットー!
監督
監督
これにて、第一話の撮影を終了でーす!
奏斗
奏斗
ありがとうございました。
桃花
桃花
ありがとうございました。
楽屋に向かう桃花ちゃんを呼び止める。
奏斗
奏斗
連絡先交換しない?
桃花
桃花
あ…はい。
声からしてあまり乗り気でないのは、分かった。
奏斗
奏斗
嫌?
桃花
桃花
…いえ。
…。
奏斗
奏斗
『よろしく!』
送ったメッセージとスタンプには、すぐ既読がついた。
桃花
桃花
『こちらこそ。』
絵文字も顔文字もないメッセージ。
桃花
桃花
『奏斗さんって、』
送られてくる文を待ったが、来た文は、
桃花
桃花
『いえ。何も無いです。忘れてください。』
奏斗
奏斗
『なに、なにー?』
おちゃらけた文を送ったが、
内心はとても気になっていた。
なんだろう。
奏斗
奏斗
今度会った時に聞いてみよう
俺の声は誰にも届かずに消えた。

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