第7話

東京の人
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2021/04/11 14:01
寂しくない訳ない
随分昔から一人でやってきた
村で孤立しても
それでもなんとかやってきた・・・・
もう慣れたんだ、と思ってた      けど・・・・

時々ものすごい「寂しさ」と「悲しさ」
が襲ってきて 怖くて怖くて
仕方がない時がある

息遣いが荒くなって

身体の奥底からとても冷たい
モノが上がってくる

目が熱くなって
『フッ、ウグッ     ウェ・・・・』

と、
嗚咽を漏らして泣いてしまう
母の形見の腕輪をギュっと握った
誰か…助けて…
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ザクッ!

鍬を振り下ろした
続けて振り下ろす

ザクッ ザック

「フゥッ」

と、夏羽は汗を拭う。
もうお日様が傾きかけている
あともうちょっと、と思いまた耕し始める


すると、ワイワイ喋ってる声が聞こえてきた
どうやらこの村に “東京の人” が 来てるらしい

弥太郎〉「泥田坊っ!」
「お前は来んなよ
東京の人 鼻もげたらわやじゃ!」

と、大声で言ってきたので

「ああ、気をつける」

とだけ答えておいた。


俺は生まれつき体臭がキツい
らしいので
弥太郎が そう言うのも頷けるだろう








なぜだか “東京の人”  の給仕係を頼まれた

……弥太郎はどうしたんだろう?


“東京の人” は、狗神さんと言って
東京で、狗神探偵事務所と
いう いわゆるオカルト専門の探偵を
やっているらしい


狗神さんは「何か最近おかしな事はないか?」と
聞いてきた。

そういえば最近、
家畜の死体の始末を任せられる事が多い。
しかも その家畜の殆どがなぜか腐っている
新月の晩、俺はまりと一緒に
狗神さんを待っていた

鞠も腐った家畜の件は知っていた
時々処理を手伝ってくれる。


虫たちが リーッ リーッ と鳴いている
むし暑い夜だった
バンッ!と音がして
振り向くと
そこには弥太郎がいた

弥太郎〉「お前っ俺が東京行きたいの知っとって
やっとるな!!」

「こんなもんつけとるから
勘違いするんじゃッッッ!!」

と夏羽のネックレスに手をかけて
石を引きちぎってしまう
鞠が石を取り返そうと
拳を構えようとしたとき
夏羽の身体から「シュー!」と煙が
出てみるみるうちに
ツノが生え、口が裂けて怪物かいぶつ
のような容姿になってしまった

鞠〉『ッッッ!?」

弥太郎〉「うわぁ!?」

夏羽〉「ハァッ!ハァッ!ハァッ!」

夏羽は石を取り戻そうと
弥太郎に近ずいて行くと同時に
得体の知れない “渇き” を覚えた


イタイ・・・
イマスグ“コイツ” ヲ イタイッッ!」


本能がそう呼びかけてきた
それに抗うように
夏羽は、石に手を伸ばす。

弥太郎〉「ヒッ!ウアァァァァ!!!」

弥太郎は石を投げだし
走って行ってしまった。
鞠は落ちてしまった石を急いで
夏羽に渡すと
それにすがり付くように
石を胸に押し付けて
うずくまった
すると、、「シュウ~」と音を立てて
夏羽の姿は元に戻った。
だが、彼はまだうずくまったままだ

鞠〉『か、夏羽くん?
大丈夫?』

夏羽〉「…鞠…来ないで…」
「しばらく一人にして……」

夏羽はうずくまったままそう言った

鞠〉『・・・・・わかった。』





鞠は静かに立ち去った

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