第3話

時空の隙間で〈2〉
726
2021/09/04 22:09
(なまえ)
あなた
ああ…ついにこの日が来てしまった…。
私は改めて学長から渡された試合表を見て、ため息をついた。

(なまえ)
あなた
もう嫌だ…。昨日からお腹痛くてあまり眠れなかったし…ああ…もう棄権しようかな…。
楽巌寺学長
楽巌寺学長
あなた。心の声が漏れ出ておるぞ。棄権は許さん。全力で試合に臨め。


私は改めて肩を落とすと、先輩たちと共に東京へと向かう新幹線に乗った。
今回の交流戦は東京で行われる。今年の1年は私一人で、先輩たちともそれほど親しくなかった。

私は元々京都の出身ではないし、呪術師の家系の産まれではないことも影響したのか、先輩たちの接しかたには時々冷たいものを感じた。

それでも両親を亡くし、自分の呪力を制御でききれない私にとって、高専は居場所だった。


東京に着くと、ホテルでまずは休息を取り、次の日に試合ということだった。私はベッドに寝転びながら明日の対戦相手について考えていた。


五条悟って、どんな人なんだろう。問題児って言われているらしいけど…。六眼を持ってるとか、本当にチートだよね。私からしたら呪術師の家系に生まれてきただけでチートみたいなもんだし…。

はあ…。

ベッドから首を傾けて窓を見ると、煌めく街並みが目に入ってくる。
(なまえ)
あなた
東京って…やっぱりすごい都会だなあ…。
その時、気配を感じてドアの方を見た。

誰かいる…?







コンコン



(なまえ)
あなた
えっ、誰だろ…?こんな夜に…。先輩…?
ホテルのドアには外の様子を伺うものはないので、気配を感じ取ろうとしたが、うまくできなかった。

開けるか迷っている内にもう一度ドアがノックされ、それから若い男の声が聞こえた。


「ルームサービスでーす」




私は眉間に皺を寄せ、ゆっくりとドアを開いた。


そこには白髪でサングラスをかけた男が立っていた。

五条悟
五条悟
へえ。あんたがあなた?


………。

とりあえず、ドア閉めよう。
五条悟
五条悟
えっちょっと待ってよ。
(なまえ)
あなた
いやいやいやいや。あなた誰ですか。叫びますよ。人呼びますよ。
ちょっとドア触らないで。
五条悟
五条悟
俺?五条悟だよ。東京の。
近く通ったから明日の対戦相手見に来たの。ねえ、何もしないからちょっと入れてよ。
はああああ???!

誰がここに泊まってるって情報流したんだよ。
くそっくそっくそっ。

五条悟
五条悟
うわっ。すごい顔してるね。
ちなみに君の先輩からここにいるのは聞いたよ。
(なまえ)
あなた
あの、私は別にあなたと話したいことはないので、お引き取りください。
五条悟
五条悟
えーっ。ちょっとさあ。つれないじゃん。頼むよ~。君に興味あるんだよ。
そういうと五条悟はドアを押さえていない方の手で私の髪を触ろうとしてきた。


なんて奴なんだ。やっぱり問題児だな。
五条悟
五条悟
あれっ。触れない…。
そういうと五条はサングラスを鼻先までずらして私の顔をじっと見つめた。吸い込まれそうな青い目に思わず息を飲んだ。

五条悟
五条悟
へえー…変わってるね、君。
私は彼の目に魅入られてつい返事をしてしまった。
(なまえ)
あなた
10分だけですよ。何かしようとしたらすぐに出て行ってもらいますから。
五条悟
五条悟
そうこなくっちゃね。
私はドアを開け、彼をホテルの一室に入れた。
でも気は抜けない。なぜこんな夜に彼が私を訪ねてきたのか…。
五条悟
五条悟
不思議そうな顔してるね~。
そして君には二つの血が流れてるね。普通の人間の血と…呪力の混じった珍しい血と…。
(なまえ)
あなた
私を勝手に透視しないでください。こんなのフェアじゃない。どうしてここに来たんですか。
五条悟
五条悟
いやあ。聞いたことない名前だったし。なんでそんな子が俺の対戦相手なのかなあって。
あ、俺のことは知ってる?
(なまえ)
あなた
(地味に失礼だな…)
もちろん。あなた問題児だって有名ですよ。
五条悟
五条悟
問題児ねえ…ククッ。じゃあ、もっと問題児らしく行動しようか?
五条がゆらりと近づいてくる。
夜の闇に映し出される彼の姿だけなら思わず見惚れてしまいそうだが、いや、見惚れている場合じゃない。
(なまえ)
あなた
万有引力…
五条悟
五条悟
うおっ。ははっ。近づけない…というより、君に近づくたびに体が重くなる。これ、俺じゃなかったら潰れてるんじゃない?
私は黙って彼を見つめた。手の内を見せたくなかったが、それ以上に近付かれたくなかった。それでも尚、笑みを浮かべながら私に近づいてこようとする五条にヒヤリとしたものを感じる。
(なまえ)
あなた
ちょっと…
何するつもりですか?
五条悟
五条悟
んー?
もっと近くで君を見たくてさぁ。照れるなよ。
(なまえ)
あなた
口元の笑みが気持ち悪い…
自信過剰な男はイケメンでもちょっと…別に照れてないし…
五条悟
五条悟
ちょっとー。聞こえてるんですケドー、、
私は改めて眉間に皺を寄せた。私の万有引力をものともしないような顔でじりじり近づいてくる五条悟。試合前に揉め事は起こしたくない。
(なまえ)
あなた
あの、これ以上は殺しちゃう・ ・ ・ ・ ・ ・かもしれないんで本当にやめてください。
一瞬キョトンとした顔を見せ、五条は立ち止まった。それからまた笑みを浮かべる。
五条悟
五条悟
君、本当に面白いねー。ますます興味湧いちゃったよ。…まあ、お楽しみは明日まで取っておこうか。帰るよ。
そう言って五条は踵を返した。ドアを閉める間際に笑顔で手を振って、

五条悟
五条悟
おやすみー
(なまえ)
あなた
……
バタン、と閉められたドアの方をしばらく見つめながら私は術を解けずにいた。…正確には解くのに手間取っていた。
(なまえ)
あなた
くそっ…
流石、噂になるだけはある。私の万有引力のレベルをここまで高めていたのに、あんな笑顔で近づいてきた奴は今までに一人もいない。驚いて呪力を高く保ちすぎた。あまりやりすぎるとまた気を失ってしまう。
(なまえ)
あなた
はあああああ、、、、、やっぱり棄権したい…。五条悟とやり合う自信ないなあー…。
ため息をついて肩を落とした。
…でも、ここまで来たからにはやるしかない。しかも、あいつちょっと気持ち悪かったし、負けたら何されるか…。いやいや、考えすぎるな、私!今までやってきたことをやるだけ。…とりあえず疲れたし、もう寝よう。





部屋の電気を完全に消し、ベッドに入った。緊張していたが、旅の疲れもあったのかすぐに眠りにつくことができた。






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