私は改めて学長から渡された試合表を見て、ため息をついた。
私は改めて肩を落とすと、先輩たちと共に東京へと向かう新幹線に乗った。
今回の交流戦は東京で行われる。今年の1年は私一人で、先輩たちともそれほど親しくなかった。
私は元々京都の出身ではないし、呪術師の家系の産まれではないことも影響したのか、先輩たちの接しかたには時々冷たいものを感じた。
それでも両親を亡くし、自分の呪力を制御でききれない私にとって、高専は居場所だった。
東京に着くと、ホテルでまずは休息を取り、次の日に試合ということだった。私はベッドに寝転びながら明日の対戦相手について考えていた。
五条悟って、どんな人なんだろう。問題児って言われているらしいけど…。六眼を持ってるとか、本当にチートだよね。私からしたら呪術師の家系に生まれてきただけでチートみたいなもんだし…。
はあ…。
ベッドから首を傾けて窓を見ると、煌めく街並みが目に入ってくる。
その時、気配を感じてドアの方を見た。
誰かいる…?
コンコン
ホテルのドアには外の様子を伺うものはないので、気配を感じ取ろうとしたが、うまくできなかった。
開けるか迷っている内にもう一度ドアがノックされ、それから若い男の声が聞こえた。
「ルームサービスでーす」
私は眉間に皺を寄せ、ゆっくりとドアを開いた。
そこには白髪でサングラスをかけた男が立っていた。
………。
とりあえず、ドア閉めよう。
はああああ???!
誰がここに泊まってるって情報流したんだよ。
くそっくそっくそっ。
そういうと五条悟はドアを押さえていない方の手で私の髪を触ろうとしてきた。
なんて奴なんだ。やっぱり問題児だな。
そういうと五条はサングラスを鼻先までずらして私の顔をじっと見つめた。吸い込まれそうな青い目に思わず息を飲んだ。
私は彼の目に魅入られてつい返事をしてしまった。
私はドアを開け、彼をホテルの一室に入れた。
でも気は抜けない。なぜこんな夜に彼が私を訪ねてきたのか…。
五条がゆらりと近づいてくる。
夜の闇に映し出される彼の姿だけなら思わず見惚れてしまいそうだが、いや、見惚れている場合じゃない。
私は黙って彼を見つめた。手の内を見せたくなかったが、それ以上に近付かれたくなかった。それでも尚、笑みを浮かべながら私に近づいてこようとする五条にヒヤリとしたものを感じる。
私は改めて眉間に皺を寄せた。私の万有引力をものともしないような顔でじりじり近づいてくる五条悟。試合前に揉め事は起こしたくない。
一瞬キョトンとした顔を見せ、五条は立ち止まった。それからまた笑みを浮かべる。
そう言って五条は踵を返した。ドアを閉める間際に笑顔で手を振って、
バタン、と閉められたドアの方をしばらく見つめながら私は術を解けずにいた。…正確には解くのに手間取っていた。
流石、噂になるだけはある。私の万有引力のレベルをここまで高めていたのに、あんな笑顔で近づいてきた奴は今までに一人もいない。驚いて呪力を高く保ちすぎた。あまりやりすぎるとまた気を失ってしまう。
ため息をついて肩を落とした。
…でも、ここまで来たからにはやるしかない。しかも、あいつちょっと気持ち悪かったし、負けたら何されるか…。いやいや、考えすぎるな、私!今までやってきたことをやるだけ。…とりあえず疲れたし、もう寝よう。
部屋の電気を完全に消し、ベッドに入った。緊張していたが、旅の疲れもあったのかすぐに眠りにつくことができた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。