第20話
特別編〜ころんくん視点〜
あの日、決めたんだ
僕が、絶対絶対守るって──
パッ!と目が覚めて辺りを見渡すと
見慣れた自分の部屋でホッとする
と、その時バン!と大きな音を立てて
勢いよく自分のドアが開く
乱暴にドアを開けた人物の正体は
僕の幼馴染、わこだった
おはよう、とわこが言うと
そう言いながら時計を見ると
8:20
朝礼まであと10分しかない
飛び起きて支度をする
僕の両親は外国で仕事をしている為
いつも家にいない
代わりに隣の家に住んでるわこが
僕の親みたいになってる
急いで制服を着たために
ネクタイがぐちゃぐちゃになってるが
それはまぁ、後で直すとしよう
次の瞬間ずんずんと僕に近付いて来て
ネクタイを結び直した
コイツ、意外と几帳面なんだよな
1口サイズのおにぎりを渡してきた
そう言いながら靴を履いている
おい、さっき食べろって言ったくせに
今度は走れってかよ
どっかで読んだ少女漫画みたく
僕はおにぎりを食いながら学校へと走った
んまぁ、学校にはなんとか着いたんだが
それよりも事件が起きている
事の始まりは学校に着いてから
わこが自分の下駄箱を開けると
大量の手紙、
ラブレターってやつ
現在12:10の昼休み
いつものように屋上でわこと2人で
弁当を食べている
僕は内心イライラしているのを
隠し切れず投げやりに言った
すとぷりの皆からは「わこの事好きだろ?」
とか言われて、何で?って聞くと
分かりやすすぎだろ、って返ってくる
僕は正直、恋とかよく分からない
そんな事よく言われるものだから
調べてみたりもした
恋とは──
特定の相手のことを好きだと感じ、大切に思ったり、一緒にいたいと思う感情のこと。
そんなもん当たり前だろ
わこの事は好きだし、大切に思ってるし、一緒にいたいと思える
でも、それが恋かなんて分からない
そんな事言ったら、メンバーにだって
同じ感情を抱いてる
もしかして僕、メンバーの事…
なんて想像したら気持ち悪かったからやめた
僕はこんなに複雑なものを抱えてるのに
コイツは呑気にラブレターの事考えてる
は!っとわこが顔を上げる
たまに抜けてるんだよなぁ
まぁ、そんなとこが可愛いんだけど
心底不思議そうにわこはこてっと首を傾げる
僕は残りのパンを一気に
口の中に入れて屋上を飛び出して行った
いよいよ放課後になった
一緒に帰ろうかと思ったけど
アイツの姿がなくて
やっぱり、手紙の相手の元へ行ったのだろうか
考えると胸の辺りがチクチクと痛む
誰もいなくなった廊下でそうむしゃくしゃしていた
アイツが別に誰と付き合ってもいいのに
僕には関係ないことなのに
なのに、
なのになのになのに
走っている、アイツを探して
小さい頃から怖がりで泣き虫な僕を
引っ張ってくれたわこ
でもある時一人で泣いてた時があった
僕がわこを、僕のヒーローにさせたから
誰にも言えなくなったわこ
だから、僕が、今度は僕が絶対守るから
心からの言葉が口から漏れた時、
教室に佇む男女を見つけた
バレないようにドアの近くに立ち盗み聞きをする
よく聞こえないなぁ、
もう、返事しちゃったかな…
なんか雰囲気おかしくないか?
そう思って覗こうとした時、
教室からバン!!と大きな音が鳴った
あまりに大きな音でビクッとしたが
構わず教室を覗く
すると、男子生徒にわこが迫られていた
顔はよく見えないけど、絶対に嫌がってる
思わず教室のドアをガラリと開けて
庇うようにわこの前に立つ
ブチ切れた僕の様子に相手は恐れたように
走って教室を出て行ってしまった
ほっとしたのもつかの間、
今度は後ろで何か倒れる音がした
振り返ると
わこが倒れていた
守り切れなかった、
体力だけはあるわこが、倒れてしまった
すぐに僕は保健室まで連れて行ったが
先生もおらず勝手にベッドを使っている
そう言ってうつむくと
誰かが俺の僕の手を取る
わこのほうが動揺しているだろうに
こんな時でさえもわこは僕を安心させようと
手をぎゅっと握っている
悔しくて悔しくて、たまらなかった
その言葉に安堵のため息をついた
…なんで今、良かったって思ったんだ?
その時を思い出したからか、
微かにわこの手が震えている
何かを考え込むようにしてわこは、
わこは俺に向かってふっと微笑んだ
その言葉が僕の体に電流のように流れていく
あぁ、認めざるを得ないんだな…
自分のしたい事、やりたい事の衝動が
今だけは抑えられなかった
戸惑ったように和子が声を出す
そう、僕は今わこを抱き締めている
耳元でそう囁き
わこに背を向けて保健室を出た
教室まで全力で走った
走っているからか、心臓がドキドキしている
いや、違う
走ってるだけじゃこんなに心臓が
ドキドキしないことも
僕は、わこに──
恋してるんだ