第73話
番外編15
ライブ終了後、辺りは真っ暗になっている時間帯
外に出た俺たちにあなたは頭を下げた
軽くジェルくんの頭を叩くさとみくん
一斉に皆が笑い始める
3人は近くのホテルに向かい
ころちゃんとわこちゃんも終電を逃すと言って
早々に帰ってしまった
突如後ろから女の子の声が聞こえて
慌てて振り返った
そこには長い髪の毛をハーフアップにまとめた
可愛らしい女の子が立っていた
女の子は慌てて頭を下げてその場から
離れようとする
どこかで聞いた事があるような…?
少し動揺した空気をなーくんが断ち切る
あ、そういえば遠井さんって
ジェルくんと高校が同じ子だったよな…?
昔からジェルくんてイケメンだし天然タラシだし
優しいから女の子からよくモテるんだよね
でも、遠井さんにだけは意地悪な事も言うし
他の女の子には言わないような冗談も言う
俺は当時、てっきり凄く仲の良い友達なのかと
思っていたんだけど、ジェルくんが遠井さんの
名前を口に出す時の目が優しいから分かったんだ
遠井さんを好きってこと
頬を膨らませてジェルくんの腕を
バンバン叩く遠井さんと、何だか嬉しそうに
ニコニコ笑うジェルくん
結構痛そうな音してるけど…
遠井さんは礼儀正しく頭を下げてから
ジェルくんを気にせず足を早める
それをジェルくんが追い掛ける
ジェルくんの瞳は、あの時の、
恋をしてる俺と同じで熱がこもっていた
さとみくんとたいちゃんも手を振りながら
近くの駐車場まで歩き出す
じゃあねー!と元気よく手を振るあなたは
それを優しく見るるぅとくんと一緒に
暗闇の中に消えていった
こんな時間だというのに、まだなーくんは
仕事があるみたいだ
なーくんに軽く頭を下げてから
美里と俺はタクシー乗り場に向かった