第34話
特別編〜さとみくん視点〜
これは某大企業で働く
男女の物語──
これはまだ俺が歌い手・実況者
活動1年目の事、
まだ研修中だった俺だが
そこそこ仕事も出来て先輩からも
目をかけられていた
だが、それは俺だけではなかった
憎たらしいくらい爽やかな笑みを
浮かべているアイツは同期のたい
俺もたいも、短大を出ている
卒業してすぐにここに入ったのだが
まぁ、いわゆるライバルってやつだ
いつの間にか先輩との話も終わっていた
らしく、ニコニコとこちらにやって来た
…うざい
こちらもニコニコしながら返す
たいは上げた口角をひくつかせて
と言うと俺に背を向けた
今のは勝ったな
お昼になり、俺は会社内のカフェに向かおうとした
が、視界にコソコソと屋上に向かう
アイツの姿を捉えた
妙に気になりこっそりと後を追う
屋上のドアを慎重に開けると
アイツが歌を口ずさんでいるのを
耳にして俺は驚愕した
歌を歌ってるから驚いたんじゃなくて
思わず声を出すと
何かを隠すようにたいが振り返る
いつも隙のないコイツの…
弱みを握ったー!
意地の悪い笑みをアイツに向ける
まぁ、別に何もしないけど
たまに缶コーヒー奢らせるくらいさせようかな
何故かたいは、吹き出すように
手を叩いて笑い始める
…それは、この前のネットニュースの題名!
ま、負けた……
それから俺達の研修期間は終わり
それぞれ部に移動させられた
よりによって
何でコイツと同じ部署なんだー!?
そうしてたいは、
今までに見せた事のない
希望に満ち溢れた様に瞳を輝かせていた
口角をにっと上げたまま
手を差し伸べてきた
こうして最強のライバルが出来た
後にコンビを組む事になるのは
また違う時にでも話そう