第13話
第11話
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莉犬が焦るようにそう言った
僕は、莉犬が連れて来る子はもっと凄い子だと思ってた
だから僕も、完璧な女の子を連れて来た
なのに…
僕のほうがあの子よりも
ずっといいのに
今までずっと一緒にいても、
見せないような笑顔をあの子に見せてた
なーくんは困ったように眉を下げていた
いつも優しいジェルくんも
少し怒ったような声色で
でも曲げられない
もしこの子を入れて
すとぷりや…ましてやちぇぷりの
皆の人気が落ちてしまったら
どうするの?まだ無名の子だよ?
この子1人のせいにするのは酷だけど
この子の歌がどれくらいのものか…
僕達に背を向けて、2人は話し合ってる
あなたちゃんは、息を吸って振り返る
緊迫して張り詰めた空気が部屋に流れている
あなたちゃんが歌い出す瞬間
つぶっていた瞳を開ける
さっきまでのオロオロして緊張して
恥ずかしそうにしていた瞳とは違う…
それはあなたちゃんの世界観に
僕達が入っているようだった
ロングトーンとビブラートが綺麗に伸びる
この子…ただ歌ってるんじゃない
その歌1つ1つに感情移入してるんだ
だからこんなに心に響く
スっと落ちていく
あぁ、莉犬
やっぱり莉犬は凄いね
いつも僕の先を行く
ちぇぷりの皆があなたちゃんを
囲んではしゃいでいる
もう、さっきの雰囲気もなく
いつもの穏やかなあなたちゃんだった
一方、すとぷりは驚きを隠せず、
といった感じだった
莉犬がドーン!と胸を張りドヤる
ジェルくんがニヤニヤしながら
僕を見る
ジェルくんにそう言われると
なんというか…
ジェルくんの足を蹴った
僕はあなたちゃんの前に立った
莉犬があなたに飛びつく
2人とももう仲良いんだね笑
僕は2人に背を向けると
あなたちゃんに呼ばれて振り返る
そう言うと控えめに笑った
まるで
花が咲いたように
すぐに部屋を出た
だって、胸の、心臓の辺りが
ギュッとして苦しかったから
結局よく分からない痛みがずっと続いた