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第6話

#5 お前がくれた希望だったから。
19
2021/08/10 12:32
病室のドアがノックされた。
佐々木 霜真
佐々木 霜真
どうぞ。
金森 結斗
金森 結斗
俺だ。久しぶりだな。
最後に会ったのは僕が最初に目を覚ましたとき。あれから、何度か寝込む事が多く、一時期は面会謝絶になっていて会えていなかった。
佐々木 霜真
佐々木 霜真
結斗…。
前回あんな別れ方をしたせいで、
どんな会話をすればいいのか分からず、沈黙が病室に漂った。
金森 結斗
金森 結斗
ごめん。
佐々木 霜真
佐々木 霜真
え?
金森 結斗
金森 結斗
俺らは霜真に任せっきりになっていた。霜真にプレッシャーをかけすぎていた。全ては俺ら部員のせいだ。
だから、お前は早く元気になることだけを考えろ。
佐々木 霜真
佐々木 霜真
違う…。僕はそんな人じゃない…。全部僕のせいなんだ…。
金森 結斗
金森 結斗
霜真!
佐々木 霜真
佐々木 霜真
え?
結斗が激しく机を叩く。
金森 結斗
金森 結斗
俺は霜真のせいだと思っていない。だから、嘘でも自分のせいとか言うな。お前が悪いならその責任は俺にもある。わかったか?
佐々木 霜真
佐々木 霜真
どういう事?
金森 結斗
金森 結斗
お前はあの日、俺にこう言った。
「結斗は大切なメンバーだから、お前が失敗してもその責任は俺らにある。皆で1つじゃなきゃチームじゃないからな。」と。
金森 結斗
金森 結斗
俺は嬉しかった。
今まで蔑まれてきた勘も、お前は占いみたいに扱って個性だと認めてくれた。
佐々木 霜真
佐々木 霜真
あ…。
そんな事、あった気がする。
でも、一年も前の話だ。
僕は思った事を言っただけで、ただ、結斗と友達になりたかっただけだったのに。
金森 結斗
金森 結斗
そして、お前はこうも言った。
金森 結斗
金森 結斗
「メンバー1人の幸せはメンバー全員の幸せだ。」そういったよな?
だから、俺が幸せである限り、お前も幸せでなきゃいけないわかったか?
金森 結斗
金森 結斗
お前が言ったんだぞ?
いつまでもウジウジしてたら部員が悲しむからな!覚えとけよ!
あぁ。そうか。
僕は思い込みをしてただけか。
結斗は僕を嫌ってなんかなかった。
僕は皆に必要とされてた。
僕は結斗を幸せにした責任がある。
だから、僕は幸せに生きなきゃいけない。
だったら、生きてやるさ。
思う存分。
どーせ、あと少しの命だ。
何をしたって怖くない。


ありがとう。結斗。

そう決意した僕の頬には大粒の涙が伝っていた。
金森 結斗
金森 結斗
あと、これ。
そう言って渡したのは1枚の色紙だった。
佐々木 霜真
佐々木 霜真
霜真へ。って僕宛?
金森 結斗
金森 結斗
当たり前だろ?
部員からだ。しっかり読んで、お礼言いに行け。
金森 結斗
金森 結斗
じゃあな。
そう言って、結斗は病室を去っていった。




僕は涙を拭って色紙に目をやる。
「早く帰ってこい。」

「待ってるから。」

そんなありきたりの文字がこんなに嬉しく感じたのは初めてだった。


そこには、結斗の文字もあった。

「バスケは続けろ。俺らの希望だ。」

あぁ。分かったよ。
続けてやる。
お前らの希望になってやるさ。





















佐々木 霜真
佐々木 霜真
先生、車椅子ならバスケをしても良いですよね?
佐藤先生
佐藤先生
え?
僕は急いで先生を呼んで聞いた。

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