病室のドアがノックされた。
最後に会ったのは僕が最初に目を覚ましたとき。あれから、何度か寝込む事が多く、一時期は面会謝絶になっていて会えていなかった。
前回あんな別れ方をしたせいで、
どんな会話をすればいいのか分からず、沈黙が病室に漂った。
結斗が激しく机を叩く。
そんな事、あった気がする。
でも、一年も前の話だ。
僕は思った事を言っただけで、ただ、結斗と友達になりたかっただけだったのに。
あぁ。そうか。
僕は思い込みをしてただけか。
結斗は僕を嫌ってなんかなかった。
僕は皆に必要とされてた。
僕は結斗を幸せにした責任がある。
だから、僕は幸せに生きなきゃいけない。
だったら、生きてやるさ。
思う存分。
どーせ、あと少しの命だ。
何をしたって怖くない。
ありがとう。結斗。
そう決意した僕の頬には大粒の涙が伝っていた。
そう言って渡したのは1枚の色紙だった。
そう言って、結斗は病室を去っていった。
僕は涙を拭って色紙に目をやる。
「早く帰ってこい。」
「待ってるから。」
そんなありきたりの文字がこんなに嬉しく感じたのは初めてだった。
そこには、結斗の文字もあった。
「バスケは続けろ。俺らの希望だ。」
あぁ。分かったよ。
続けてやる。
お前らの希望になってやるさ。
僕は急いで先生を呼んで聞いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。