あの時、俺は何も言えなかった。
霜真は悪くない。
俺らは強い霜真に任せっきりになってた。あいつが責任を感じてはいけない。
なのに…俺は…。
病院の帰り道、俺は後悔していた。
事故に合う。そして、霜真は死ぬ。
それは前から予感はしていた。
現に霜真は練習で体調を崩していた。
だから、加奈に伝言を頼んだんだ。
「体調崩してなら早く帰って休め。」って。当日、出れなくて嘆くのはあいつだからな。それなのに……。
勘が鋭いとか言われておきながら、何も出来ない自分に腹が立った。
それで、霜真に八つ当たりしたなんて言えやしない。
そう言ってやるべきだった。
霜真は俺にとっての恩人。
俺はこの勘のせいで人から見てみぬふりをする最低な人と言われ、ずっと他人と、距離を置いていた。
そこに霜真がきた。
霜真は何も気にしない。
明るく話しかけてくれて、勘も1つの個性として認めてくれた。
俺はあいつに言わなきゃいけない事がある。
忘れるわけがない、あの日の1言を。
俺はあの1言に救われたのだから。
霜真、ごめん。
俺にとってお前は俺の1番だから。
次に会ったときはちゃんと謝ろう。
そう決めて、帰路についた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。