部活に行く途中、近道して行こうと人気（ひとけ）の少ない場所を通り抜けようとしたら意外な人物が目に留まり声をかけた。

なんでこんなとこに？




『 そっか、ちょっと話しててね～…… 』


「 ……なんか言われたの？ 」




浮かない顔をするあなたを見て、何か言われたんだろうかと問いかける。




『 ううん、そういうのじゃないよ心配してくれてありがとう。その、ね、……告白、されちゃってさ 』


「 はぁ！？ 」




何か言われてるじゃん！！！

俺もそういう意味で聞いたわけじゃないけどさ！！




「 ……返事、したの？ 」


『 うん、断った。付き合うって好きな人同士がするものでしょ？ 』




真面目。

ほんっと真面目。純粋っていうの？なんなの？

とりあえず付き合ってみるとか、そういう考えは彼は一切持ち合わせていないのだろう。


たぶん、告白した女子はあわよくばな期待を胸に持っていたはずだ。

だいたい脈なしで告白するのなんてそんなもんじゃないの？それか砕けて忘れるってのもある？まぁ、あなたに告白する女子は全員砕け散れ。




『 僕、まだ好きな人いないし…… 』


「 …… 」




……おっと、俺が砕けそうだった。

いたら困るよ。俺なら大歓迎だけど。




『 覚はさ、告白されたりするんでしょ？女の子たちからもかっこいいって評判だもんね 』


「 まぁ、告られたことはある、よ 」




そういう評判なのは知らなかったケド。

俺が告られたことある前提で話すあなたがなんだか可笑しい。




『 覚はさ、そういう人、いるの？ 』


「 ……いるよ〜 」


『 え……ほんとに！？付き合ってたりするの？ 』


「 んーん。俺の片思い 」


『 そうなんだ……両想いになれるといいね 』




……付き合ってよ。俺を好きになってよ。

言いたい。

ものすごく言いたいけど、今言ったって進展しないどころか友達という関係も危うくなるかもしれない。

意識はしてくれそうだけど、確実に今の心地よい関係は壊れる。




『 というか、これから部活だったね？大丈夫？ 』


「 あ！！鍛治くんに怒られる！！ 」


『 呼び方……先生は友達じゃないんだから……行ってらっしゃい！ 』


「 真面目だね！！！行ってくる！ 」










2年になってから、先輩後輩はもちろん同学年からもモテるのは知っていたけど、告白されたと直接聞いたのは初めてだった。




「 ﾁｯ…… 」




あなたってノンケだろうし、あなたが女の子好きになったりしたら俺勝ち目ないじゃん！！

今までと違って、ガンガンあなたに話かけてくるし！女子全員が俺の敵！！




「 天童機嫌悪くね？若利、なんか知ってる？ 」


「 彩白が告白されていたと言っていた 」


「 あぁ～…… 」




そりゃあなただもん、好きになる気持ちわかるよ？でもね、俺のなの。

君たちには絶対渡さないから。

どうにかしないとね～どうしよっかな～




「 覚ｨ！！余計なこと考えてんじゃねーぞ！！集中しろ！！ 」


「 げ……ウィ～ッス　」




鍛治くん容赦ないんだからぁもぉ～……












「 彩白先輩、あの…… 」


『 ん？ 』




高校生ともなると勇気かなにか湧いてくるのだろうか？俺と一緒の時でも告白という呼び出しをしにあなたに声をかける女子。

他は眼中にありませんってか。




「 ……ちょっとごめんね～今時間なくってさ、 」


「 ぁ、そ、そうですか 」


『 覚？ 』


「 行こ？ 」


『 う、うん、えっと、ごめんね、またね 』




行かせるわけないでしょ。

無理に引っ張ることはしないけど少しだけこっちに来てと催促してみると俺の方に寄ってくれるあなた。

声をかけてきた女子より俺を選んでくれることに俺の機嫌は上々だ。




『 覚、どうしたの？急ぐ用事あったっけ？ 』


「 あっれ～あった気がしたんだけど、なんだったっけ？ 」


『 えぇ？忘れたの？ 』


「 まぁいいや、ってかさぁ昨日部活でね、―― 」




2年の階に移動して廊下の窓際で残り時間を過ごしていると寄越される視線。




「 あの2人って距離近いよね～もしかしてそういう仲？ 」


「 ……そうかもね 」




あなたは見えないのもあって元々距離が近いけど、俺は周りに見せつけるようにあなたとの距離をもっと詰めるようになった。



あなたに向けられる視線と俺に向けられる視線。

種類は違えど、どれも優越感を感じずにはいられない。





彩白あなたは天童覚のもの。

彩白と言えば天童、俺と言えばあなた、わかった？

俺とセットだからね？

紅白みたいで縁起いいでしょ？




みんな、よ～く覚えておくように。