“ 彩白くん、手伝おうか? ”
“ 彩白!おはよ! ”
“ お、彩白!次合同だろ?行こーぜ! ”
小学校の頃とは違って、高校ともなるとたくさんの人が声をかけてくれる。
白鳥沢は気のいい人たちが多いのだろう。
“ あなた ”
中学の頃から呼び捨てになった呼び名。
関係ないって言ったけど、彼だけが使う呼び名は特別なものに感じた。
覚の言う通りなのかも……?
同じ学校、互いに寮生、同部屋、とても仲良し。だからといって四六時中一緒にいるわけじゃない。
それぞれに別々の友達ができて、それぞれの人間関係ができていく。
「 あ、彩白くん! 」
『 ん? 』
「 少し話したいんだけど……今時間あるかな? 」
『 あるよ~ 』
「 よかった!場所移動していい? 」
『 うん?いいよ 』
女の子の緊張したような声、場所を変えようとすること。これは……
自惚れとかなしにしてこれは告白っていうやつだと思う。
2年に上がってからというもの、女の子から話かけられることが多くなって、この状況になるのは何度目だろうか。
覚がかっこいいって言われているのはよく聞こえていたから告白とかされてたりしてと思っていたけど、まさか僕にそんな日がくるなんて。最初はビックリしたよ。
「 あの、ね―― 」
少し疑問に思うことがある。
この子の声は……僕と親しい子じゃないし、そんな子が僕のどこを好きになってくれたんだろう?
告白してくれる子たちが僕ともし恋人関係になったとして、僕は彼女を満足させれるような彼氏ができるのかな。
彼女に誘導してもらいながらのデートになるし、僕のペースに合わせてもらわなきゃいけないし、景色を見ることはできないし、触れ合うことはできるけど……
『 ……ごめんね 』
女の子たちが求めるような、リードしてくれて守ってくれるかっこいい彼氏ってのはできそうにないだろうなぁ……
でも、好きな人ができたら、頑張ってみたりするのかも。
「 あなた~今帰り? 」
落ち込んだ声の女の子と別れ、申し訳ない思いを抱きながら校舎を出ると覚の声に呼び止められた。
『 覚も? 』
「 俺はこれから部活ぅ~こんなとこでどしたの? 」
『 そっか、ちょっと話しててね~…… 』
「 ……なんか言われたの? 」
そもそも、“好き”ってどういう感じなんだろう。
あの小説の2人みたいに苦しくて切なくて暖かいものなのかな。
“好き”というものはまだ分からないけど僕が理想の人を挙げるなら、
同情とかで近付いてこない人。
さりげなく助けてくれて支えてくれる人。
一緒にいて楽しい人。
見えないことを理解してくれる人。
かなぁ……
『 ううん、そういうのじゃないよ心配してくれてありがとう。その、ね、……告白、されちゃってさ 』
「 はぁ!? 」
例えるなら、そうだなぁ
覚みたいな人だね~
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。