『 …顔、触っていい? 』
なにか言われると構えてしまっていたから、一瞬何を言ってるのかわからなかったがすぐに理解した。
俺の顔を知ろうとしている。
触れられるのが嫌ではないんだけど、あまり乗り気はしない。
でも彼なりになにか考えがあってのことだろうと手を取り、自分の頬に当てた。
ひとつ ひとつ
優しく触れられるたびに
ひとつ ひとつ
知られていく
なんか、恥ずかしい…
「 んん~ くすぐったいよぉ 」
『 もうちょっと我慢して 』
「 んぅ~… 」
感覚を確かめているあなたくんの間近にある顔をじぃーっと見つめる。
あまり外に出ないのだろう肌は白く、伏せられた睫毛は長い。
筋の通った高い鼻、白い肌に映える薄っすら色づいた唇。
閉じられた瞼の中には神秘的な色が隠れてる。
自分とはまるで違う。
綺麗だよね〜
なんだっけあの色が白い動物っぽい。と思い出せない名称を考えていると目の前にある目がそっと開かれた。
視線の合わない彼は言う。
『 ふふっ覚くん、かわいいね 』
「 …… 」
なんだろう、
悪く言われないことは喜ぶべきなのに、切ない。
君の目が見えていたら、
友達になってなかったのかな?
君の目が見えていなかったから、
友達になれたのかな?
君が俺を見ることが出来たとして、
同じ感想が出てくるのかな?
君の見る俺は、いったいどんな顔をしているの?
『 あ、ごめん。かっこいい?よ? 』
「 むぅ…かっこよくなるもんね! 」
切なさはそっと隠して。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。