第11話

まるでチョコアイスみたい
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2022/03/16 16:23







いつもより早く部活が終わる日は学校に残る者もいれば、早々と帰宅する者、思い思いに過ごす。

俺はあなたを迎えに行く前に、机の中に置きっぱなしだった宿題を取りに自分の教室に寄った。






あなたの家に寄るだろうし、やって帰ろうかな~






そう思いながら教室の階に着くと廊下に漏れる声。

教室に近づくにつれ内容がはっきりしてくる。






「 ――ていうか、なんか怖いよな天童って。何考えてるかわかんない感じがさ 」


「 わかるわかる 」


「 さすがゲスブロック使うだけあるわ~ 」


「 連携無視!戦術無視!目立ちたいのか知らねぇけど、悪目立ちですよってな~ 」


「 ゲス?なにそれ 」






教室を覗くと1つの机を囲む数人の男子生徒。

バレー部のやつが律儀にブロックの種類から説明してやっている。





聞こえてんだっての~……





小学生の時に遊んだのがきっかけで楽しくなったバレー。

皮肉なことに、楽しくなったのがきっかけで陰口は容姿のことだけじゃなくなった。

中学じゃ、あからさまに言う人はいなかったから表面上はそれなりにナカヨクしていたけど。






俺は俺の気持ちいいバレーをしたいの~

実際それで点稼いでんだから文句言わないでくれる?






俺は空気の読める男だからと話の区切りがつくのを待って教室に入った。







「 おつかれぇ~!」


「 っ!? 」


「 おつー… 」


「 お、おう。お疲れ 」


「 なになに~?ブロックの話?楽しそうじゃん 」


「 え、あーあれだよ 」






目が泳ぐ彼らの口から出てくるのは最近流行りのバンドやゲームの話。

とっさに思いついたのだろう話題は続く訳もなく、じとっとした空気を作り上げていた。






なんでこいつら直接言わねぇんだろ?

皮肉ってんのわかんねーの?

気持ち悪くないの?この空気






仲を深めたいとは思わないが口喧嘩でもできればスッキリしそうだとは思う。だが皮肉めいた言葉で喧嘩を誘うも誰も何も言い返してこない。

そんなことをしているから何考えてるか分からない奴と言われるんだろう。






「 ふ~ん 」






前より精神面は強くなったが言葉の棘は確実に刺さってくる。

いくら開き直ろうと、どうでもいいと切り捨てようと、釘がトントンと打たれるように少しずつ少しずつ深くなっていく。



それさえも“俺はもう大丈夫だ”と鈍い痛みに蓋をして知らないフリをするのだ。












「 あ、いたいた、おーい天童! 」




廊下から聞こえる俺を呼ぶ声に周りの空気が少し軽くなるのを感じる。





なにホッとしてんだよ







「 は~い?なに~? 」


「 彩白がお前のこと探してたぞ?早く行ってやれよ 」


「 あ゙!ヤベ!」


「 さっき職員室前で会ってさ、教室に戻るって言ってた 」


「 マジ!ありがと~! 」







不思議だよね。

さっきまでの言葉も空気も俺の性悪さも

一瞬で吹っ飛んで幸せな気持ちにしてくれる。






そんな君が待つ教室に向かう足取りは軽い。












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