第20話

No.20
30,836
2020/08/30 05:56
あなた
焦凍。そろそろ布団行くよ、一旦起きて








ぺちぺちと頬を軽く叩けば、眠そうに開かれるオッドアイ。





幼い子供のようにごしごしと目をこすると、膝枕の状態から私を見上げる。







あなた
起きて
轟焦凍








のそりと起き上がり、少しぼけっ、とする弟。





なにこの間抜け面。







あなた
ほら、先行ってて
轟焦凍
なんでだ?
あなた
足痺れたの。あんたを膝枕してたから








長時間膝枕をしていたせいか、両足がめちゃくちゃ痺れる。





今立ったら、絶対どこかに衝突すると思う。







轟焦凍
立てねえのか?
あなた
だからそう言ってるじゃん
轟焦凍
...
あなた
は、え、ちょっとなにやってんの








急に無言になったかと思えば、弟は突然、私の膝裏と脇の下に手を入れる。





そのまま、ひょいっ、と私を両手で持ち上げた。





これが女子なら誰もが憧れるという、お姫様抱っこか。





って、関心している場合じゃない。







あなた
降ろしてよ
轟焦凍
歩けねえんだろ。なら俺が運ぶ
あなた
いいってば
轟焦凍
やだ








弟は私の言うことなどお構い無しに、私を抱えたまま廊下を歩き始める。





なんで初めてが弟なんだよ。





てか絶対重いでしょ、私。







轟焦凍
別に重くねえぞ
あなた
心読むな








お前はエスパーか。





でも...。





弟を見上げてふと思う。





前までは同じ身長で、体格もそんなに変わらなくて、私よりひ弱な子だったのにな。





いつの間にかこんなに成長して、筋肉もついて。





どんどん私から離れていってしまう。







あなた
...焦凍。
轟焦凍
なんだ?
あなた
私のこと、嫌いにならないでね








ふいに零れ落ちた、私の本音。





弟は驚いたように目を見開いていたけれど、やがて、ふっ、と微笑む。







轟焦凍
なるわけねえ。大好きだ
あなた
っ、








またそんな恥ずかしいセリフを堂々と...。





でもまあ、これが弟だものね。







あなた
...ありがとね
轟焦凍
おう








双子だけれど、私たちは似ていない。





だけど、お互いを思う気持ちは、他の誰よりもあって、似ている。





それだけで満足だ。







あなた
焦凍...
轟焦凍
...あなた?寝たのか?








弟の腕の中で揺られて安心したのか、私はそのまま眠ってしまった。







轟焦凍
一人で全部、抱え込むな。俺があなたの、力になるから。ずっと一緒にいるから








布団に優しく私を降ろして、おやすみ、と。





そう言って私の額にキスをした弟を、眠ってしまった私は知らない。

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