第397話

No.395
7,985
2021/04/01 16:20
あなた
ねぇ焦凍、そろそろ...
轟焦凍
やだ。







あれからかなり時間がたったが、弟は一向に私から離れない。





そろそろ夕食の時間だと思うんだけど...。







轟焦凍
まだあなたと二人きりがいい
あなた
えぇ...







背後から抱きつき、弟は私の肩にぐりぐりと頭を擦りつける。





甘えたい時にする、弟の行動のひとつだ。







あなた
なんか今日は一段と甘えただけど、なにかあった?







そう言うと、弟はぴたりと動きをとめ、ぼそぼそと話し出す。







轟焦凍
最近他のみんなにあなた取られてるような気がして、嫌だった
あなた
そ、そっかぁ...







うーん、なんと反応すればいいのやら。





とりあえず肩に乗っている頭を撫でてやると、弟は私を抱きしめる力を少し強めてきた。







あなた
もう...。甘えんぼなんだから
轟焦凍
これはあなたの前だけだ







そりゃあね。





みんなの前でこんなカッコ見せらんないでしょ。







轟焦凍
...
あなた
あ、ちょっとどうしたの
轟焦凍
少し寝る。膝枕してくれ
あなた
えー







もう夕食の時間だ、って言ってるのに。







轟焦凍
少しでいいから
あなた
...10分だけだからね
轟焦凍
!おう







渋々承諾すると、弟は嬉しそうに私の膝に頭を乗せて横になった。





と、







あなた
っ、ちょっと、擽らないでよ







弟が急に、私の膝にすっ、と指を滑らせてきた。





思わず体がぴくりと反応する。





弟は私の反応を見ると、クスリと笑った。







轟焦凍
やっぱお前、敏感だよな
あなた
っ、なに言ってるのよ。もう膝枕させてあげないよ







そう言えば、弟はぴたりと私を弄るのをやめた。





相変わらず単純なやつ。







轟焦凍
...







ほんとに寝ちゃったんだけど...。





しばらくしてから寝息をたて始めた弟に、私は息をつく。





いつもと変わらない、穏やかな寝顔だ。







あなた
...








火傷の跡に手を伸ばし、触れる。





ざらりとした感触に驚き、反射的に手を引っ込めた。





けど、再び手を伸ばして触れる。





...この火傷の跡は、醜くなんてない。





少なくとも、私はそう思ってる。







轟焦凍
...
あなた
...







弟には、いつまでも笑っていてほしい。





もう、つらい思いはさせたくない。





私が絶対に守るんだ。





たったひとりの、大切な弟だから。

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