第145話

No.145 side轟焦凍
15,985
2020/10/10 15:24
轟焦凍
ごめんな、本当に悪かった。もう泣かないでくれ








今は正直、周りの目なんて気にしてられねえ。





俺はあなたを落ち着かせるために、声をかけてひたすら謝る。







轟焦凍
もう大丈夫だ。怖かったよな、本当に悪かった。ごめんな
あなた
っ、もうやらないでよ。ほんとに、もう
轟焦凍
ああ、わかった。もう二度としねぇ。約束する








このまま居ても、みんなに見られるの嫌がるよな。





一旦あなたを部屋に送ろうと、俺は緑谷たちに声をかけた。







轟焦凍
緑谷、切島、上鳴。悪ぃけど、ゲーム抜けるな。あなたを部屋に送ってくる
緑谷出久
う、うん。そうした方がいいよ。僕たちのことは気にしないで...
切島鋭児郎
お、おう!行ってこい轟!








まだ泣き止まないあなたを誘導しながら、エレベーターに乗って部屋に向かう。





ここまで泣いているあなたを見たのは、久方ぶりだ。





相当怖がらせてしまったのだろうか。





最低だな、俺。







轟焦凍
あなた、部屋着いたぞ
あなた
うん...








部屋の中へ誘導し、ドアを閉める。





それから、あなたに向き直った。







轟焦凍
ごめんな、あんなこと言って...。
あなた
も、もういいから...っ








嘘つけ。





本当は良くないくせに。





その証拠として、姉は俺の服を握り締めているのだから。





...本当に悪いことしちまった。





泣きやもうとしているのか、あなたは手の甲で必死に涙を拭っている。







轟焦凍
そんなことしたら、目ぇ腫れるぞ
あなた
...!!








俺はそう言い、手の甲で涙を拭うのを抑止して、その代わりに人差し指で顎から目の下を摩って涙を塞き止める。





あなたが顔を上げ、驚いたようにこちらを見つめた。





そして俺は小さい子をあやす様に、姉の優しく背中を叩いた。







轟焦凍
悪かった...。
あなた
...








服を握り締めていた手は、いつの間にか俺の背中へと回される。





あなたが自分からしがみついてくるなんて、珍しい。





それ程までに怯えさせてしまったのだと、怖がらせてしまったのだと。





今更ながらに罪悪感を感じる。







あなた
...あんたに、嫌われたんじゃないかって思った。それがどうしようもなく怖かったの、








姉は親父に見放され、姉さんたちしかいなかった。





だけど今、ここに姉さんたちはいない。





クラスのやつらのことを信用はしているのだとわかっているが、家族ではない。





友達だ。







あなた
私が一番信頼してんのは、あんただけだったから...っ








過去を思い出させるような行為をしてしまったんだ、俺は。





最低じゃねえか。





あなたの一番の理解者で、味方は、俺しか居ねぇのに。







轟焦凍
悪かった。不安にさせちまったよな








ぎゅう、としがみついてくるあなたの頭を撫でる。





いつもと立場が真逆だ。







あなた
...泣くつもりじゃなかったんだけど、ごめんね。びっくりしたでしょ?
轟焦凍
まあ、正直驚いたな。けど、めちゃくちゃ可愛い、って思っちまった
あなた
ふっ、なにそれ








バッカみたい、と。





あなたが少しだけ笑った。





どうやら泣き止んでくれたようで、ほっ、と息をつく。





もう泣かせねぇようにしねえとな。







轟焦凍
たまにあなたに甘えられんのもいいな
あなた
私は甘えてるわけじゃないの。勘違いしないでよ
轟焦凍
今の状態じゃ説得力ねえぞ
あなた
...うるさいな。黙ってなさいよバカ








あなたに甘えるのは好きだ。





だけど、たまにこうやって甘えられんのも、結構いいかもな。

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