第32話

No.32
25,853
2020/09/03 14:30
轟焦凍
うめぇ、さすがあなただな
あなた
そんなの誰でも作れるよ
轟焦凍
そうか?
あなた
そう








ざる蕎麦をすすりながら、私たちはそんな会話をする。





二人だけで晩御飯を食べることは、あまりない。





だいたいは、お姉ちゃんがいるから。





たまにお兄ちゃんもね。





お父さんと晩御飯を食べるのって、ほとんどないなあ。







轟焦凍
おかわりあるか?
あなた
ない
轟焦凍
そうか...
あなた
...私の少しあげるよ
轟焦凍
いいのか?
あなた
うん
轟焦凍
ありがとな








あっという間に蕎麦を食べ終えてしまった弟に、私の分を少しわけてやる。





そうすると、弟は嬉しそうに口元を緩めて蕎麦をすすり始める。





相変わらず単純だな。







あなた
ご馳走様。じゃあ私、先にお風呂入っちゃうね
轟焦凍
一緒に入らねえのか?
あなた
誰が入るかアホ








どんだけ一緒に入りたいんだよ。







轟焦凍
嫌なのか?
あなた
嫌っていうか、この歳で男女でお風呂はダメでしょ
轟焦凍
俺は気にしねえ
あなた
私が気にするの








いつものポーカーフェイスを捨て、明らかに不満そうな表情をする弟。





そんな表情したって、今回は無駄なんだからね。







あなた
ダメなものはだーめ。じゃ、私入るから
轟焦凍
...わかった








あ、やっと受け入れた。





私は安堵の息をついて、お風呂に入りに行く。







轟焦凍
...








脱衣所で衣服を脱ぎ、洗濯機に入れる。





着替えとタオルは置いてあるし、準備万端。





体にタオルを巻いて、お風呂に入る。





軽くシャワーを浴びて、体と頭を洗う。





髪が長いから、ちょっと時間かかるんだよね。





髪を洗い終えて、やっと湯船に浸かろうとタオルを体に巻く。





湯船に足を入れた、その時だった。





ガラリとドアが開いたのは。







あなた
は?
轟焦凍








私は思わず立ち尽くす。





入ってきたのは、弟だった。





腰にタオルを巻いている。







あなた
ば、バカ!!なんで入ってきてんの!!
轟焦凍
悪ぃ、もう上がったのかと思った








そう言いながら、弟は躊躇うことなくズカズカと入ってくる。





いやいや、なんで当たり前のように入ってきてんだあんたは。





私が呆然としている間に、弟はシャワーを浴び始める。







轟焦凍
体冷えるぞ
あなた
え、あ、うん








そういえば立ち尽くしたままで、湯船に浸かっていなかったっけ。





冷えてしまった体を温めるために、私は肩まで湯船に浸かる。





と、







あなた
え、ちょっとなに入ってきてんの
轟焦凍
別にいいだろ
あなた
よくない








ただでさえ狭い湯船が、一気に狭くなる。





というより、ダメだろこの状況は。







あなた
もう。私、上がるからね
轟焦凍
待て








上がろうと立ち上がった途端、弟に腕を掴まれる。





と、急に立ち上がったのと腕を掴まれたせいか、視界が一瞬眩んで体がよろけた。







轟焦凍
おっ、と。危ねぇ








それを見た弟が慌てたように立ち上がり、私を抱き止めた。

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