第8話

No.8
40,865
2020/08/25 13:34
麗日お茶子
あなたちゃん、また明日!
あなた
うん、また明日ね








更衣室での件は、なんとか相澤先生からのお説教を聞かずに済んだ。





まあ、穴は見つけ次第先生がなんとかすると思うけど。







轟焦凍
あなた、行こう








昇降口で、ぽつんと弟が一人。





どうやらわざわざ待っていたようで。





というか、朝も同じセリフを聞いた気がするんだが。







あなた
わざわざ待つ必要ないのに
轟焦凍
俺があなたと行きたかったから
あなた
なにそのドヤ顔








なんかムカつく。







轟焦凍
駅、行こう
あなた
はいはい、わかってますよ








スタスタと昇降口を出て歩いていくと、弟はぽやっ、とした表情で後をついてくる。





なんでこうも一緒に行動したがるのか。







あなた
今日の、晩御飯...
轟焦凍
あなた
なに食べたい?
轟焦凍
蕎麦
あなた
言うと思った








また蕎麦かよ。





だけど、







あなた
まあ、今日のヒーロー基礎学頑張ってたもんね。蕎麦にしよっか
轟焦凍
おう...!








蕎麦にしよう、と言えば、弟の目が輝いた。





すっごい嬉しそう。





周りのオーラが輝いてるんだよ、オーラが。







あなた
電車乗って向こう着いたらそのまま買い物行くから、付いてきてよ
轟焦凍
わかった








って、電車の時間もうすぐじゃん。





周りに誰もいないことを確認したあと、弟の手を引っ張って駅まで急ぐ。





なんとかホームに駆け込み、電車が来る前に着くことができた。







轟焦凍
間に合ったな







なんの危機感もなさそうな、いつものぽやっ、とした表情で呟く弟。





焦りというものはないのかお前には。





少し呆れていると、電車が到着する。







あなた
ほら乗るよ
轟焦凍
おう








時間も時間だ。





いつもより人が多い。





人混みって、あんまり好きじゃないなぁ。





トラブルに巻き込まれそうでちょっと怖い。







あなた
座れば?
轟焦凍
いや、あなたが座れよ
あなた
私はいいから。疲れてるんでしょ、座りなさいよ
轟焦凍
あなただって疲れてるんだろ








電車の空いている席に座るかどうかで、軽い言い合いになる。





が、次の駅に到着すると、何故かあっという間に席がガラ空きになった。







あなた
...ほら、座るよ
轟焦凍
...おう








さっきまで言い合いをしていたのが、なんだか恥ずかしくなった。





ガラ空きになった席を見て、私と弟は無言で顔を見合わせる。





結局、二人並んで席に座った。







轟焦凍
...
あなた
焦凍...?








席に座ってしばらくたつと、肩になにかが持たれかかってきた。





見れば、弟が私の肩に頭を乗せ、眠たそうにしている。





重いんですけど。







あなた
焦凍、重い。退いて
轟焦凍
...ん〜








いや、ん〜、じゃなくて退いてくれよ。







あなた
重いから退いて
轟焦凍
...やだ








弟はそう言って、私の肩に頭をぐりぐりと押し付けてくる。





出た、甘えん坊。





学校にいる時は、The・クールな弟。





だけど家にいる時や、今みたいに二人だけになった時。





弟はこうなるのだ。







あなた
はぁ...。まったくもう、








思わずため息をつく。





こうなってしまったら、もうどうしようもない。





私は無言で、紅白頭をわしゃわしゃと軽く撫でた。





弟は一瞬びくっ、と肩を跳ねらせ、体を起こしてこちらを見つめる。





私は弟の方を見ずに、一言。







あなた
駅に着くまで、寝てれば。
轟焦凍








一瞬驚いたような表情を見せたあと、再び私の肩に頭を乗せてくる。





それから5分もたたずに、静かに寝息をたて始めた。





このような状況になると、大抵は私が折れる。





なんか、抵抗する気が失せてきちゃうんだよね。





まあいいや、って。







轟焦凍
...
あなた
ほんと、ムカつく








だけど何故か、無意識に口元が緩んでいて。





私って、意外と弟に甘いのかもしれない。

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